共立女子第二中学校高等学校(元八王子町)で6月5日、飼育しているホタルの「飛ぶ」様子が確認された。2011年に移った新校舎では初めて。同校では構内で30年ほど前からホタルを育てている。
飼育30年「虫」先生の情熱
「旧校舎の時のように多くを飛ばすことができていないので、私としてはまだ『成功』とは言えませんが」。担当する松本重樹教諭(理科)は野外研究部の顧問として、生物に「深い情熱」を持っている。生徒からは「虫の先生」とも呼ばれている。
同校のホタルの飼育は約30年前、松本さんが同校で教員生活をスタートさせたときに始まる。豊かな自然環境をいかそうと学校から声がかかり、松本さんは近隣の小学校や多摩動物園を調べ、同じ方法で育てだした。
水槽に餌のカワニナを入れておくと稚貝が生まれる。そこへ孵化したばかりのホタルの幼虫を入れ、さらにカワニナを加える。それを繰り返し、幼虫が終齢に近づいたらビオトープ(生物生息空間)に放つ。「水槽での飼育期間は、早いもので(終齢になるまで)2カ月ほど、遅いもので2年以上かかります」。4月上旬の雨の日、幼虫は土の中にもぐりこみ、蛹(さなぎ)となる。そして約1カ月後、成虫として飛び立つ――。
旧校舎では1日に多い年で100匹以上、少ない年でも50〜60匹は舞っていたという。毎年観察会を開き、地域の人や幼稚園児、受験生を招待していた。
11年、同じ敷地内にあった大学が千代田区へ移転することに伴い、中学校、高等学校は道路の向かいから大学が使っていた校舎へ移った。旧校舎は取り壊された。おのずと観察会も行われなくなった。
「移転の話があったとき、(20年以上続けた)ホタルの飼育をできないと思い、少しさびしい気分になりました。一方、毎年飛ばすというプレッシャーからは解放され、複雑な気持ちでした」
松本さんはてっきり「もうない」と思っていた。ところが学校側と保護者の間で新校舎に飼育施設を作ることが決定していた。「なので断れない状況でしたが、学校が認めてくれたことは嬉しかったです」と再び飼育できるようになった喜びを話す。
新校舎での飼育は旧校舎の時と基本的には同じだが、「新しい出身地のホタルの性格がよくわからず苦労しています」と打ち明ける。水量、水の流れ、外灯の影響などの違いがあるそうだ。
新校舎では一昨年はじめて成虫の「存在」が、今年はじめて「飛ぶこと」が確認された。その数はまだ数匹〜数10匹。「虫が嫌いな生徒も、ホタルが飛ぶ姿を見ると喜び、光っているホタルを手に取ります。ホタルの飼育は自然と接する機会が少なくなった今の子にとって貴重な体験になると考えています」。松本さんは成虫が飛ぶこの時期は、毎晩遅くまで学校に残って観察をする。「以前のように再びホタルが飛ぶ学校として復活させたいと思っています」
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