「小さなことでも相談にのってくれる、やさしいおまわりさんでした」――。八王子警察署丹木駐在所(滝山町)の園田信一警部補(60)=写真=が3月末で定年退職を迎えた。「長くても10年」と言われる駐在所勤務において園田さんは29年間にわたり、加住地域を見守り続けた。
鹿児島県出身の園田さんは高校卒業後、警視庁へ。1988年から同駐在所勤務となった。当初は「3年くらいはここで」と考えていたそう。
ところが1990年2月、「事件」が起こる。朝4時、「車が燃えているよ!」と新聞配達の青年に起こされる。当時頻繁に起こっていた過激派による犯行だった。火の粉が駐在所に移り、全焼。家族は全員無事だったが入学式を控えた長女のランドセルは燃えてしまった。
「毛布や食べ物などまわりの人が色々支援してくれました。赴任して、たかが2年なのに…」。この事件を機に園田さんは意志を固める。「恩返しをしていこう」。ここにとどまることを決めた。
逃亡する犯人を得意の柔道技で投げ飛ばし、見ていた市民から大きな歓声を受けたこともあった。都内を中心に空き巣を続ける余罪200件の男を管内で逮捕したこともあった。
そして気が付けば29年。3月末には地元関係者らが集まり、「感謝をする会」が開かれた。「小さな相談も聞いていただき本当にありがとうございました」などの労いの言葉に園田さんは笑顔で応えていた。
あの事件がきっかけで、園田さんは異動を希望せず長年にわたり同じ駐在所に勤務することになった。「人情的なものを教えてもらいました。みなさんの温かさは私の人生の宝。これからもできる限り恩返しをしたい」。今後は1年契約で再任用勤務を続けるそう。
なお園田さんは2014年にはその功績が評価され、第84回都民の警察官表彰を受けている。
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