▽首都圏で社会問題となっている下水処理汚泥や焼却灰の取材で、省庁の実態と見えない被害、今必要な心構えを認識した。今月16日に経済産業省が示した「考え方」は、処理汚泥や焼却灰などの取り扱い方法を示したもので、放射性物質の濃度による処分方法の考え方を示したものだ。
▽一見すると経産省が示したように見える「考え方」だが、よく読むと同省が監督する原子力安全・保安院の考えをそのまま流し、各都県を通じて自治体に通知したものだということが分かる。資料に添付された問い合わせ先として、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、環境省、経済産業省、さらには原子力安全・保安院の計6カ所が列記されている。そこからは経済産業省の主体性をうかがい知ることができない。
▽これを読んだ大和市の担当職員は「経済産業省は監督官庁としての自覚がない。平時は強い権限を振りかざし、見下ろすように事細かに指示を出すが、非常時にはこの有様」と怒りをあらわにする。そうした憤りを抱えながらも、北部浄化センターに溜まり続ける焼却灰と日々格闘しているのが、最前線に立つ自治体職員と危険を伴う作業を担う32人の作業員たちだ。
▽大和市北部浄化センターでは毎日最大約1・3トンの焼却灰が溜まり続けている。そうした中、市は維持管理業者とある調整に入っている。その調整とは、放射性物質を含んだ焼却灰の取り扱い業務だ。平時では発生しえない業務だが、すでに業務にあたっている。その費用が棚上げになってきた。大和市をはじめ各自治体はこうしたギリギリの状態で日夜、作業にあたっている。国は早期に事態収束を図り、東京電力はこうした費用についても誠意をもって対応するべきだ。
▽一方で大和市にも課題がある。測定した市内各地の放射線量の公開方法もそのひとつだ。市議会・新政クラブの井上貢氏がそれを言い当てた。井上氏は16日の一般質問で「見えない脅威と共存する時代に突入した。数値発表には丁寧な説明が必要で改善の余地がある」と指摘。市民が正しい知識を持てるよう市に工夫を求めた。まさにその通りだ。まずは知ること、そして考えること。これが問題との共存にはかかせないのではないだろうか。
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