大和市出身の小説家・飛騨俊吾さん(町田市在住)が、初の短編集『穴おやじ』で、市内が舞台の表題作「穴おやじ」を発表した。戦後の大和を舞台に、少年と謎の男「穴おやじ」との不可思議で心温まる交流を描いている。
「穴おやじ」は、終戦から3年後、1948年初夏の大和が舞台。小学6年生・小松哲也は、「三ツ穴」と呼ばれるかつての防空壕で、髭面でビン底メガネを掛けた謎の男「穴おやじ」と遭遇する。得体の知れないその男と交流を重ねる哲也は、戦争に翻弄された男の運命を知り…。表題作「穴おやじ」のほか、相模原市を舞台にした「ヒッチハイク」など4つの短編が『穴おやじ』に収められている。
昨年デビュー作が話題
著者の飛騨俊吾さんは、1964年横浜市生まれ。会社務めの傍ら執筆活動をし、2015年に広島カープを題材にした「エンジェルボール」で新人作家ながら大長編でデビュー。この作品は、第6回広島本大賞「小説部門」で大賞を受賞し、舞台化された。
5歳から32歳まで大和で過ごした飛騨さん。作品中に登場する防空壕も、小学生のときに深見地区に実在した防空壕をモデルにした。「暗闇の中から何かが出てきそうで、とにかく怖くて、遊ぶときも度胸試し的な意味合いが強かった」と当時の思い出を話す。作品の執筆に際し、防空壕があった場所を見に行ったが、藪が生い茂っていて特定できなかったという。
「大和で愛される作品に」
「大和市は、やはり私にとって人生の最も多感な頃を過ごした特別な街。そのころに感じた大和の空気を物語にした」と作品への思いを語る。デビュー作が大長編だったことから、次は短編を書いてみようと子どもの頃の記憶をベースに書き始め、特に構想もなかったがスラスラと5日間くらいで形が出来上がった。
描きたかったのは、「人が人を想う気持ち、その永続性」。地元が舞台だからこそ、伝わる思いもある。「この作品には、少し前の時代の大和の風景や人々の姿など、様々な思い出を詰め込みました。大和の皆さんに、『穴おやじ』が愛されることを心から祈っています」と地元にメッセージを寄せた。
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