大和市は、認知症者の徘徊で踏切事故などを起こし、第三者に損害を負わせた場合に備え、市が保険契約者となり損害保険に加入する議案を9月定例会に上程した。議案が可決されれば、11月にも保険契約を行う。
鉄道事故等に対応全国の自治体で初
自治体が徘徊の恐れのある高齢者を被保険者として保険契約を行うのは、全国で初。保険の対象者は「はいかい高齢者SOSネットワーク」に登録している人(7月末時点で237人)すべて。補正予算額は初年度の保険契約料約323万円。保険は、事故を起こした徘徊者のけがなどを補償する傷害保険にも合わせて加入する。補償額は個人賠償責任保険で最高3億円、死亡・後遺傷害保険が300万円など(左上表)。
補正予算案が可決されれば、入札を受付、11月にも保険契約に入る予定。保険の期間は1年間。
自転車保険と同じ裁判の判決引き金
今回の保険加入の伏線となったのが、2007年に愛知県で起きた鉄道事故。認知症者のため徘徊中だった男性が線路内に入り、列車にはねられ死亡した。JR東海は、男性の家族に約720万円の賠償を求め、1審と2審は家族に賠償を命じたが、16年3月、最高裁は男性の妻も高齢で要介護者であったことや長男が長期にわたり同居していないことなどから賠償責任はないとして、JR東海の請求を棄却していた。
大木哲市長は「この判決が引き金になった」と話す。
市内には3つの私鉄(小田急・相鉄・東急田園都市)が走り、踏切の数は32カ所に上る。本紙の取材に対して、大木市長は「昨年度から実施している子どもたち(小学5・6年、中学生)を対象にした自転車保険と考え方は同じ。大和市の構造上の特性として、他市に比べ事故のリスクが高く、市として市民のリスクを軽減できないか」と担当課に投げかけ、今回の議案上程となったという。
宣言から1年続く積極施策
大和市は昨年9月15日に「認知症1万人時代に備えるまち やまと」を宣言。以来、認知症患者やその家族のための施策を積極的に行っている。
これまでに徘徊高齢者の保護とその家族の負担軽減にGPS付の靴=写真=を無料で提供を始めた。またグループホーム入居の家賃補助、介護をしている人に対する臨床心理士の相談会、認知症カフェの開設など。この9月定例会には、国立長寿医療研究センターが開発したアプリを活用し、65歳以上の市民向けの専門の認知機能検査実施についても予算化。議案が通れば、来年1月にも導入される予定になっている。
15日(金)には、川崎幸クリニック院長で「認知症の人と家族の会神奈川県支部」の代表を務める杉山孝博さんを講師に迎え、講演会が行われる。シリウスメインホールで午後1時30分から。事前申込み不要。参加無料。問合せは高齢福祉課【電話】046・260・5612。
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