毎年、端午の節句が近づくと、空へ向かって高く昇っていく鯉のぼりが上郷に現れる。柱に括りつけられているわけではなく、風に乗って、穏やかに漂う鯉のぼりを揚げているのは、上郷に暮らす83歳の山崎昇さんだ。
1本の糸に括り付けられた鯉たちは、なんと凧。「孫が初節句のときに買って、使わなくなった鯉のぼりを凧にして、この時期に揚げているんだ。毎年、楽しみにしてくれている人や、驚いて話しかけてくれる人がいる。それが何より嬉しいね」と白い歯を見せる。
70歳のとき、相模川の河川敷で凧揚げをしている人たちを見かけ、興味を持った山崎さんはすぐに声を掛け、先輩に教えてもらいながら凧作りを始めた。「大勢でやっていたら競争心が出てきた」と、より高く、より空中で「ぴたっ」と止まる凧を追い求め、試行錯誤を重ねた。
出来上がった凧の数はいつしか100を超え、多くの凧が連なる「連凧」や、蝉の形をした「蝉凧」など、種類も多岐に渡った。「凧はお祝いのときに揚げるもの」という観点から、2020年の東京オリンピック開催が決定した際には「東京オリンピック おめでとう」と書いたものを、富士山が世界遺産に決定した際には「世界遺産の富士山」と書いたものを作り、すぐに空に飛ばした。「物事はタイミングを逃さず、すかさず、手際よく。もう作ったの!とよく驚かれるんだよ」と嬉しそうに話す。
屋根裏で創意工夫
天気予報のチェックは毎日欠かさない。天候と風が良い日は、午後から凧揚げに出掛ける。帰宅後は、自宅倉庫の屋根裏にある「凧部屋」で作業する。「どうしたらより高く飛ぶか、多くの人に喜んでもらえるかを創意工夫しながら作るのが楽しい。”柳に飛びつく蛙の努力”って言うでしょ。1つ教わったら、それを2や3にできるように頑張らないとね」。今後の目標は、鯉のぼりの連凧を、より垂直に飛ばせるようにすること。「前に、柱に括り付けられたように、急勾配に揚がった夢を見た。それ以来、どうしたらあのようにできるか考え続けている。叶うまではやめられないね」と語った。
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