新規連載 海老名むかしばなし 第2話「彦六ダブの話」【1】
「彦六淵(ひころくぶち)」という地名は、今ではもう消失してしまったが、昭和初期の公図などには記入されている。
現在の下今泉1113番地付近と思われるが、昔、このあたりを流れていた鳩川も流れを変えて、今ではその東側を流れている。
この「彦六淵」、別名「彦六ダブ」にまつわる話を池田武治(国分)さんは、次のように語る。
「昔、下今泉の鶴松(地名、現存)に彦六という働き者で親孝行の若者が住んでいました。正月も迫った年の暮れのある日、彦六は正月用の門松を切りに、鳩川沿いの松林へ出かけました。
その日は買ったばかりの新品のナタを持って行き、手ごろで形のいい松を探して歩きましたが、なかなか適当なのが見つかりません。ふとふりかえると、さっき見たはずのあたりにすばらしく形のいい松が立っているではありませんか。『おかしいなあ、さっき見たのに』と思いながらもその松を切ろうとナタをふるいました。
ところが、カチーンと金物をたたくような音がして刃が立ちません。もう一度強くふるうと新品のナタははねかえされて川の中へ飛んでいってしまいました。手はしびれるし、もう彦六はたいへんなめにあいました。
川に落ちたナタが惜しくて彦六は冷たい水中にとびこみました。底にあるナタにあと少しというところで、ナタはどうしたことか深みへ深みへと沈んでしまいます。とうとういちばん深いところまでもぐって探していると、川の底にとてもきれいな女の人が立っているではありませんか。
…続く…
参考資料/海老名むかしばなし
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