40周年記念大会を11月30日に開催する座間市詩吟連盟の会長を務める 河野 誠一さん ひばりが丘在住 74歳
情感を詩(うた)にのせ
○…漢詩や和歌に独特の節を加えることで、その情感や景色をより鮮明に描き出していく。「『とおくに』と言うのと、『とおーーくに』と言うのでは、その遠さが違うでしょ」。同じ詩を吟じても、言葉の「間」や「溜め」、声のトーンによって十人十色の景色が浮かびあがる。「世界中、数ある言語の中でも、日本語ほど表情豊かな言語はないよ」。その魅力に取りつかれ、早四十余年になる。
○…小学生の頃から歌が好きだった。特に、美空ひばりはデビュー曲からの大ファン。当時から音感に長け、2〜3度も聴けばすぐに覚えた。その感性とよく通る声からコーラスに誘われたが、コブシの効きすぎた歌声が浮いてしまい、すぐさま「お役御免」になった。詩吟の門を叩いたのは母の影響。30代のはじめに、「緑神会」の祖・林緑神氏の直弟子として、詩吟の世界に足を踏み入れた。
○…師からはよく、ロマンチストであれ、と教えられた。ある日「どんな花が好きか」と尋ねられ、山間部に小さな花をつける「コミヤマスミレ」をあげた。それを聞いた師はにっこりとほほ笑み「君は詩吟に向いているよ」と、一言。「自慢できることはあまりないと自分で思っているけれど、良い師に恵まれたことだけは胸を張れる」。すっかり詩吟に夢中になり、当時の職場の工場でも、人がいなくなったのを見計らっては機械音の中で吟じた。
○…かつて「吟道」として、精神力を高めることにも重きをおいた詩吟。今では少し様子が変わり、趣味として気軽に詩吟を楽しむ人も増えてきたように感じる。近年は伴奏つきや皆で合唱する「合吟」など多様化が進み、時代の流れを感じさせる。9団体・約180人が加盟する市詩吟連盟も、最初からのメンバーは自分を含め3人のみになった。「今の目標は、次世代にバトンを繋げること。何十年やっても極められない、この奥深さを若い人にももっと知って貰いたい」
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