栗原中央の特別養護老人ホーム「栗原ホーム」で、27年間にわたり、伝統工芸「七宝焼き」を利用者に教え続けている人がいる。座間に住み、七宝焼き歴40年超の菊池英代さん(81歳)だ。11月には、この功績が評価され、公共福祉・文化に貢献した人を称える「緑綬褒章」を受章。12月4日には同ホームでお祝い会が開かれ、「教え子」たちから祝福を受けた。
七宝焼きは、古く奈良時代から続くとされる金属工芸の一種。金や銀など金属を素材に「胎(たい)」と呼ばれる土台を作り、その上から釉薬を焼き付けて、鮮やかな色を表現する。花や波など模様を表現するには、細い金属線を、絵を描くように土台に貼り付ける必要があり、高い集中力と根気が要求される。
デザインに始まり、胎の作成、植線、色挿し、研磨などの工程を経て、作品が完成するが、大作になると半年以上も時間がかかるという。「面倒な作業が多いけど、仕上がった時の達成感たらないのよ」と屈託なく笑う。
責任感、胸に
子育てに余裕が出来た40数年前、「自宅でも出来るものを」と、七宝焼きを始めた。東京芸術大学の故・田中輝和さんなどに師事して腕を磨いた。60年続く日本伝統工芸展で入選するなど、創作者としても活躍している。
利用者に七宝焼きを教えるようになったのは、ホーム開設間もない頃。公共施設で七宝焼きサークルの講師を務めていた菊池さんに、「ぜひ利用者にも教えて欲しい」と打診があり、これを快諾した。「一度受けたからには責任持って」という言葉通り、講師を務め続け、気付けば27年という歳月が経っていた。今は月1回ホームを訪れているが、利用者との触れ合いは良いリラックスになるそう。「何より皆さんに喜んでもらえるのが嬉しい」と話す。
迷い振り切る
80歳になり、講師を続けるか、辞めるか葛藤していた時期もあった。「美しく身を引きたい」という美学があったからだ。81歳にして未だ元気だが、「必ず衰えはくる」と、引退する事を考えていたという。そんな中での、緑綬褒章受章――。「こんな名誉な賞をいただいたら、『さようなら』なんて言えないわね」。
お祝い会も兼ねた4日、利用者から「おめでとうございます。自分のことのように嬉しい」とメッセージを贈られた菊池さんは、「お祝いをしてもらって感極まる想い。もう少し、講師を続けさせてくださいね」と笑顔で応えた。
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