横内謙介の劇場シアター談義 ―31―
『提言!』
『泥の河』の小栗康平監督と『ALWAYS 三丁目の夕日』の脚本家・古沢良太氏と言えば、映画界のトップランナーで、そのおふたりを招き、映画、文化、街作りなどについて熱く語って頂いた「あつぎ映画祭」は誇るべき文化イベントであるなあとしみじみ思った。運営に尽力された方々に敬意を表したい。
ただ文化財団の芸術監督として残念に思うのは、文化専門の組織であるはずの我が財団が、この素晴らしい祭りの企画運営に携わっていないことだ。しかも3月8日、9日と小ホールで開かれたこのイベントの仕切り担当が、一日ずつ役所内の違うセクションになっている。そのためポスターも二枚あった。理由もあってのことだろうが、不合理ではなかろうか。文化事業は財団の下に一本化し、ダイナミックに展開できないものか。
渋谷の青山劇場という立派な劇場が今年限りで閉鎖、解体される。これは何故か厚生省(当時)が建設して運営していた施設で、厚生省が劇場運営をする意味が不明だと糾弾され取り壊されることになった。まったくその通りなんだけど、我々演劇人にとっては愛着ある小屋であり、こういう国政の場当たり的方針転向に心底怒ってる。私はせっかく生まれたこの映画祭が二の舞にならなきゃいいなと危惧する。財団は財団でドンドン引き受け、継続成長させていく力を持たなきゃいけない。文化芸術は教育や街作りの良き友だが、添え物ではないのだ。
劇作家・横内謙介
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