本厚木駅東口交差点のそばにある福助(福山勝男社長)が今月で開店60周年を迎えた。厚木市とほぼ同時に生まれ、まちの変遷を見つめてきた大衆居酒屋の軌跡を福山社長に聞いた。
1955年4月、本厚木駅が高架になるよりずっと前。なかちょう大通りの現在の場所に、木造2階建てで福助が開店した。
初代店長は勝男さんの祖母。炭火を使った「やきとん」が名物の店だったという。ちょうど工業団地が整備され、厚木で働く人たちが増えてきた時代。駅の近くの店としてにぎわいをみせた。
先代の父の時代には、再開発に伴い本厚木駅前ビルに入居。全3階のいまの店舗形態となった。
3代目は元ラガーマン
勝男さんが3代目として店に立ったのは今から21年前。それまでは社会人ラグビーチームでフッカーとして活躍。しかしバブル崩壊のあおりでチームが解散したこともあり、家業を継ぐこととなった。店主の経歴もあってかスポーツ関係者の来店も多く、店の壁には様々なラグビーチームのフラッグが並ぶ。
3代目が力を入れているのが鮮魚。きっかけは小田原の漁港に行ったこと。「電気が走って『これを扱わなければ』と即座に感じました。朝獲れの魚を店で出したい」。小田原の競りには勝男さん自らと店員が交代で顔を出し、活きのいい魚を仕入れている。
初代から続くやきとんも健在。備長炭の中でも最高級の紀州産を使っていることを示す木札は、創業当時からのもの。60年の時を経て真っ黒に変わっている。炭火焼だからこそ出せるのが、厚木名物のシロコロ。東京から出張に来たサラリーマンが注文することも多いという。
半世紀以上続くだけあって、中には数十年来の常連客も。親子2代で訪れる人もいるという。それでも「30代とか若い人たちにはまだまだ知られていない。街並みも変わって、人の流れも変わりましたね」と渋い表情に。
60周年を迎え、取引先や付き合いのある人から生花が届いた。「こんなの初めてです」と顔をほころばせる。社長自身は現在50歳。今後の目標を聞くと「水槽を入れて、仕入れた魚を泳がせたいですね」。駅前の顔は、進化し続ける。
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