●それは世界最難関の国際問題
地方創生、クールジャパンなど、地域の経済活性化に関連する国策は多数あります。しかし、地域経済活性化は、産官学連携で取り組んだとしても、なかなか成果や効果が出にくい傾向にあります。これはなぜでしょうか。
それは、「先進国の地方の地域経済活性化」は、「発展途上国の地方の地域経済活性化」よりも難易度が高い「世界最難関の国際問題」だからです。地域活性化というと、多くの人は、「みんなで頑張ればできるのではないか」と安易な発想で取り組むケースが少なくありません。しかし、地方が衰退していく現象は、世界中で見られるグローバル経済問題であり、地域や個人の努力や観念論では、なかなか覆せない課題でもあります。
仮に、日本で地域経済活性化を実現するためには、どのような条件が必要になるのでしょうか。それは、「【1】都市部よりも、はるかに少ない地方部の資源、資本、人材の中で、【2】都市部よりも、はるかに高い付加価値化、ブランド化を実現できる産品やサービスを創造すること」です。この話を聞くと、多くの人は初めて問題の難しさが把握できてきます。
このような厳しい条件下で、現実的に地域経済活性化を実現するためには、どのようなアプローチや戦略が採用できるでしょうか。我々は厚木市の「七沢地区」を対象に、試験的に地域経済活性化戦略の取り組みを実践し始めました。
●七沢の可能性と魅力
2017年7月30日、東京農業大学 長島孝行教授、東京農業大学 川嶋舟准教授と私(石山徹)の3人で、厚木市の七沢地区の地域活性化の可能性と具体策について、温泉旅館の七沢荘でシンポジウムを開催しました。そこでは、まず厚木市および七沢地区の可能性や条件、魅力として、以下の内容を述べました。
【1】厚木市には高速道路のインターが複数あり、七沢地区は都心部から30分で来られる地方であること。インフラの強みがあること。
【2】厚木市の七沢地区は、「都市部にある地方地区」としてモデルケースになりうること。地域活性化は、できるだけ集客可能性がある都市部と近い方が、戦略が立てやすいが、七沢地区はすぐ近くに10万人規模の都市が多数あること。
【3】厚木市には、異なる専門分野の大学が複数存在し、産官学連携の可能性があること。
【4】七沢地区には温泉旅館、福祉施設、医療施設などが存在すること。
【5】七沢地区には神奈川県の水源涵養林の保全にも寄与している製材所があり、その製材所が神奈川県の製材の9割を占めていること。神奈川県の水源は丹沢水系であり、七沢地区は丹沢水系の始まりであること。
【6】厚木市は都市部の地域活性化策は多数取り組まれているが、中山間地域に属する七沢地区などは、地域活性化、地域ブランド化策は、あまり取り組まれておらず可能性があること。
【7】厚木市には、農産品などの6次産業化などに必要な加工施設が多数存在していること。
●研究者チームで地域実験スタート
魅力と可能性ある七沢地区で、我々、研究者は、高付加価値化が見込め、6次産業化が可能な樹木系植物の栽培プロジェクトを始動しました。
具体的には、ナノテクノロジーや様々な分野の科学的研究・開発により導かれた、特殊な「クワ」と「カイコ」を栽培・管理・生産することです。この「クワ」と「カイコの絹」を、ナノテクノロジーで加工し、高付加価値化が実現できる化粧品や医療関係産品等に応用します。これにより、地域に新たな産業モデルを実現できるよう、現在、試験的に地域実践を始めています。
これから七沢地区、厚木市および周辺地域で展開できればと考えております。
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