厚木警察署(大宮秀之署長)は3月9日、犯罪被害者への民間賃貸住宅の媒介支援で、(公社)神奈川県宅地建物取引業協会県央支部(三橋義人支部長)と申合せを調印した。県内初の取り組み。これにより同署管内では今まで住宅支援が受けられなかった被害者への支援が広がることになる。4月1日施行予定。
犯罪被害者への住宅支援の一環として神奈川県と県宅地建物取引業協会は2011年に「犯罪被害者等への民間賃貸住宅の媒介等に関する協定」を締結している。これは犯罪被害を受けた人が転居を希望した場合、仲介手数料などを無料にし、住宅情報などを提供するというもの。
この協定の支援対象は、殺人や傷害事件、性犯罪被害者などの生命・身体犯被害者で、全治1カ月以上の傷害を負った場合に限り適用されるなど、適用範囲が限定されている。
DVや親族間被害者も対象
今回の申合せは、昨年、厚木警察署管内の被害者が県に転居を依頼していたが、現状の取り決めではなかなか支援が進まなかったことがきっかけ。厚木・愛甲地区被害者支援ネットワーク(馬嶋順子会長)のメンバーである宅建協会と同署が相互に連携することで被害者支援の迅速な対応が可能になるとして、話し合いが進み、調印に至った。
申合せの内容は、支援対象として生命・身体犯被害者に限らず、ストーカーや空き巣などにも拡大。さらに県の協定では対象外となる家庭内暴力(DV)や性的虐待など親族間犯罪の被害者も支援する。
被害者が転居を希望した場合、窓口である同署住民相談係から宅建協会県央支部へ共有され、その後同支部の会員である225社から該当する住宅情報が提供される。加盟各社には個人情報の保護や、原則として仲介手数料の負担、速やかな情報公開などで被害者支援を図る予定だ。
三橋支部長は、「空き物件はあるのに住宅が見つからないというミスマッチを防ぐためにも、相互に協力していくことが大切」とコメントしている。
同署によると、昨年、管内のカウンセリングなどの支援対象は79件。うち、ひき逃げや死亡事故が33件、性犯罪や凶行犯が46件。
同署の担当者は「管内では生命・身体犯被害に関わらず転居を希望する人も多い。今回の連携により、被害者の精神的負担が軽減され、いち早く生活を安定させることができる。相談があれば気軽に問い合せを」と呼びかけている。
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