8月1日から8日まで座間神社「神社会館すいめい」で「私の女人源氏」を展示する 横前 裕子さん 蓼川在住 78歳
独自の表現、切り拓く
○…初々しい「女三宮」や奔放な「朧月夜」など、紫式部が書き残した日本文学「源氏物語」の人物を190cmほどの高さ、幅は3枚で4mにも及ぶ大きな抽象画などで表現する。日本の古典的な紋柄や色調で、コントラスト、直線、円の織り成す独自の世界観は圧巻。「オリジナルの何かを探したら、自然に生まれたんです」。穏やかでゆったりとした、温かい空気が漂う。
〇…「源氏物語」に出会ったのは中学生時代。「夕顔」や「紫の上」などいくつかの抜粋だったが、光源氏の恋物語に自身の淡い初恋も重なって、少女は夢中になった。夏休みの自由研究でそのストーリーを詩画にしたこともある。幼少から国語教師を志し、大学では国文学を専攻。名教授の研究室で源氏物語を研究した。卒業論文執筆の夏休みは国会図書館へ1カ月間毎日通って文献や資料を読み込んだ。
〇…憧れの教壇に立ってから、縁あって教員仲間に日本画家、故・山中雪人氏がいた。山中氏に絵を習い、昼間は教師の仕事に没頭し、家に帰ってから深夜キャンバスに向かう日々。42歳で初めて個展を開き、「ハマ展」では県知事賞も受賞。「本当にあっという間でした」。「充実」という言葉では足りないほど中身の詰まった時間を振り返った。58歳の時に退職し、絵に集中するように。自分の表現法を探す中、思い当たったのが「源氏物語」だった。久しぶりに本を手にし、登場する姫たちに思いを馳せた。月夜、雷雨、絡まる帯や着物など、文学の深みを抽象画の深みに変えて独自の表現にたどり着いた。
〇…78歳の現在も年3回の展示にむけ創作を続ける。銀座や品川など人の多く集まる大きな会場での展示が続く中、今回は地元での展示。「せっかくだから多くの方に見てもらいたい」。女性らしい繊細な感性が生み出す、具体像を払った、「心」を描く画。個性豊かな姫たちを、個々の受け止め方で感じてほしい。