神奈川県猟友会 綾瀬支部支部長を務める 高倉 猛さん 綾西在住 69歳
自然・生命と向き合う時間
○…狩猟者のための公益団体「猟友会」。全国に約13万5千人が所属し、神奈川県には約2200人が会員となっている。狩猟の事故・違反防止や希少鳥獣の保護、野生動物の生息数調整のための管理捕獲をする。鋭い眼差しの「ハンター」のイメージとは似つかぬ柔和な笑顔が印象的。
〇…茨城県水戸市の出身。小・中・高とともに過ごした友人とは今でも大の仲良し。1カ月のうち1週間は水戸に建てた家で過ごしている。射撃を始めるきっかけもその友人の誘いだった。出版社に勤めていた会社員時代、通勤中に読む文庫本は大藪春彦氏のものが多かった。「狩猟免許も持っていた大藪氏の作品は、銃なども作中に多々登場していたから、すぐに興味を持った」。現在は狩猟免許も神奈川と茨城の2県で持ち、綾瀬と水戸の2カ所の「ふるさと」がある。
〇…「狩猟は動物の殺生もありますから、若い人には受け入れ難いのでしょう。仕方ないと思います」。ここ10年で猟友会の人口はかなり減少している。27年前、自身が入会した頃は70人以上いた綾瀬支部も現在では20人と3分の1以下になった。行楽の多様化に伴い猟場も減っている。その反面、シカの食害により山の草木が枯れたり土壌がむき出しになることで土砂流出に繋がる危険もあり、県は今年の捕獲目標を750頭とした。依託を受けたハンター達は週に2回約3kgの銃を持って登山道とは異なる急斜面の山に入る。山の植生と野生動物と人との共存バランスを保つために果たしている役割は「趣味」と呼ぶには重い。
〇…5年後、10年後には「なくなってしまうものかもしれない。それは淋しい」。しかし気軽にできるものでも、恐怖心を持ちながらやるものでもない事を知っているから「仕方がない」という。自然や生命を相手に一瞬の時を逃さない、スポーツとも文化とも言えぬ狩猟。「興味がある若い人がいれば」と控えめに話した。