戦後から綾瀬地域で栽培されていた「高座スイカ」。栽培の手間などから姿を消した「幻の果実」を復刻しようと3年前に取り組みが始まり、今年も旬の季節を迎えた。
「高座スイカ」は昭和24年に奈良県から綾瀬へ持ち込まれた。当時の農業指導員・萩原氏により広められたこのスイカ「富研号」は皮が厚く、スイカ特有の縞模様がほぼ無いのが特徴。収穫した実をトラックの荷台に積んで舗装されていない砂利道を走っても傷まないと称された丈夫さは、昭和30年に作詞された「綾瀬音頭」でも「投げて積もうかチョイト西瓜の名所」と唄われている。
綾瀬の特産品として昭和28年ごろをピークに東京や横浜で爆発的な人気を博した。しかし、連作を嫌うなど栽培の手間や難しさから生産は徐々に減少し、昭和50年ごろには市場から姿を消した。
当時の味を追い、2010年に市の担当者が萩原氏の一族が経営する萩原農場を尋ねた。同農場では「富研号」の復刻に成功していた。協力を得て綾瀬の特産として復活をめざし試験栽培のために種を分けてもらい、11年、かつて「高座スイカ」を生産していた市内吉岡の農家・石井栄さん=写真=が試験栽培を行った。
3年目となる今年は、「綾瀬高座スイカ研究会」(石井栄会長)を立ち上げ、市内農家5戸で種を分け合って生産が広がっている。石井さんによると「今年は雨が少なくスイカにとっては良い天候。甘味が増している」という。7月17日現在、収穫が始まっており、8月15日ごろまでが旬という。大きさにより1玉1000円から1800円程度。
市内ではグリーンセンター綾瀬(深谷中・【電話】0467・70・5622)や8月4日に綾瀬市文化会館駐車場で朝6時30分から開かれる「朝一番徳の市」などで販売する予定。