工業品がアイデア商品に
市内に本社工場を置く松村鋼機(吉岡東2の2の24/松村朗代表取締役)が、自社の工業製品をステーショナリーアイテム「ウェーブクリップ」として生まれ変わらせ、一般消費者向けに販売を開始した。綾瀬の工業技術を外に発信すると同時に新たな商機を模索するための事業で、一般向け商品の開発・販売は同社初の試みとなる。
松村鋼機は企業向けのバネや止め輪など、主に自動車部品の製造を行っている。中でも特徴的なのが「コイルドウェーブスプリング」と呼ばれるバネで、30年ほど前に米国で開発された技術を同社はすぐに導入し、製造している。
波打ちながら螺旋を巻く形状の「コイルドウェーブスプリング」は波の一つひとつに反力があるため、従来のコイルスプリングの半分の高さで同等の荷重に耐えられる特性を持つ。コイルスプリングより軽量でコンパクトだが、独自の計算式による設計と専用製造機械の設計まで全て自社で行う必要があるため、日本では製造工場が少なく認知度が低い技術の一つだという。
今回、製品化するにあたり着目したのが、その独特の形状。技術発信のため出展していた工業製品展示会などで多く聞かれた「製品の形状が美しい」という感想から、それを活かした商品が開発できないかと社長自ら音頭を取り、2年前にプロジェクトチームを立ち上げた。
免震装置など様々なアイデアが飛び交い、昨年の夏頃にクリップの構想が固まった。材質を鉄からサビにくいステンレスに変え、断面を丸く滑らかにするなど一般消費者向けであることを考慮した改良が加えられた。
「試作品を作り試験的に販売をしたところ、好評を得たため製品化に踏み切った」と、プロジェクトメンバーの一人である斉藤出さんは話す。クリップは直径5cmほどのデスク置きタイプと、冷蔵庫やボードなどに貼り付ける直径3cmほどの磁石付タイプの2種類。名刺やハガキ、メモなどを360度どの方向からも複数枚挟むことができる。
価格は1個700円で、市役所内の「ともしびショップむー」で販売されている。そのユニークな取り組みはテレビ番組で紹介されたほか、2月からは東京都美術館ミュージアムショップでも販売が行われるなど広がりを見せている。「これが綾瀬の工業技術や工業製品が全国的に認知される機会になり、相乗効果で新たな商機に繋がれば」と斉藤さんは話している。
製品の問合せは同社【電話】0467・50・0641へ。