絶滅危惧種カワラノギクの保護活動を続けている 小倉 久典さん 愛川町田代在住 61歳
一途に夢追う行動派
○…環境省のレッドデータブックで絶滅の恐れが指摘されているカワラノギク。全国でも限られた河川敷に咲くこの可憐な花は、子どもの頃から馴染みのある心の原風景の一つ。「あの頃は意識していなかったけれど、身近な河原にたくさん咲いていた。一面に咲く景色をもう一度甦らせたい」と身を乗り出す。
○…石だらけの河原に深く根を張り、土砂混じる増水の後にも芽を出すたくましい植物だが、陽が遮られるとすぐに枯れてしまう繊細さを併せ持つ。治水が進んだ現在、河川に増えた草木に押され姿を消しつつある。兄が代表を務めるNPOが9年前から保護に乗り出していたが、当初は活動に携わることはなかった。4年前、夏の炎天下に一人で雑草を取る兄の背を見て「手伝ってあげようかな」と最初の一歩を踏み出した。草むらの中に静かに佇む小さな芽を見た瞬間「これは守ってあげなくては」と心に決め、今ではライフワークとなっている。
○…季節に応じて様々な作業があるが、一番の重労働は「草むしり」。「一週間ですぐに伸びる。真夏はひっくり返りそうになるほどだよ」と苦笑する。終わりの見えない雑草とのいたちごっこに心が折れそうになるが、最近は変化が起きている。大学生や地元金融機関職員が定期的に草むしりの手伝いに参加し、活動の輪が地域に広がりだした。「本当にありがたい。次世代に続くように、一人でも多くの方に参加してもらえたら」と瞳に力を込める。
○…来年には4人目の孫が生まれる。「やっぱり可愛い」と相好を崩す。若い頃から「休みの日でも何故か体を動かしちゃう」という性分で仕事は出張整体と建物解体で二足の草鞋。10月下旬にはカワラノギクの観賞会も控え、準備と仕事で大忙しの毎日だ。「百歳を超えて元気な人もいる。自分もその仲間に入りたいね」。心に深く根を伸ばした一途な郷土愛が、満面の笑みの原動力に違いない。