秋の明治神宮献詠短歌大会で「入選」に選ばれた 冨田 茂子さん 愛川町田代在住 70歳
五感で詠む「ありのまま」
○…「窓よりの 淡き陽射しも 扱き混ぜて 紙を漉くなり 春浅き日に」。県立あいかわ公園の工芸工房村で体験した紙漉き。窓から温かな光が降り注ぎ、紙の中に陽射しを混ぜ込む情景を詠んだ歌が、今年10月の明治神宮献詠短歌大会「入選歌」に選ばれた。最高位の「特選歌」に次ぐ賞で、3千首を超える作品から20首しか選ばれない。「最初はびっくり。その後に嬉しさ」と満面の笑み。
○…半原生まれ。短歌を好んだ両親の影響で幼い頃から馴染みはあったが、本格的に学び始めたのは1999年から。小学校の恩師が主宰する「みなかみ短歌会」を知り、すぐに足を運んだ。「厳しい先生でしたがとても博識で『先生に認められたい』という想いでやっていました」と笑う。ところが、教えを乞う中で師が逝去。心の拠り処を見失いかけた時に「この想いを短歌にして投稿してみよう」と新聞社に届けたところ、掲載作品に選ばれた。以来、毎週のように詠み、今では短歌欄の常連に。
○…作品づくりにこだわりは「ありません」ときっぱり。言葉を選び、見たままをそのまま表現する。ただし、「アンテナを高く持つ」ことは常に心掛けている。外に出て、多くのものを見る、感じる。それが歌の幅を広げる。最近は毎月の体操クラブでボクシングエクササイズを始めた。「短歌を色紙や半紙に描くため」と、生まれて初めて習字教室にも通い始めた。積極性が、更に新たな扉を開く。
○…毎月1回、第3土曜日に同会の会員が中津公民館に集い、互いの歌を批評する。近年は会員数減少も悩みの一つ。「自分の思いを五・七・五・七・七の調べに収める。パズルのような面白さで、誰にでもできる」と短歌の魅力を語る。3人の孫のうち、良く遊びに来るという小学4年生の孫は短歌の楽しさに触れ、作品は新聞社の投稿欄にも掲載された。「短歌を好きになってくれれば良いけれど」と相好を崩す。