最新号:2012年2月 3日号
2010年8月27日号
これも横須賀のエッセンス
○…色町に生きたたくましくも妖艶な女性の姿が描かれた版画絵。額縁にゆらゆらぶら下がっているのは唇を模ったアクセントの模型。スイッチを入れるとネオン看板に明かりが灯る作品もある。個展のテーマは「ヨコスカの女」。熱気と危険な香りが充満する1960年代のドブ板を、遊び心満点の独自の手法で表現している。「久しぶりにドブ板を描いてみたくなったんです」。
○…当時のリアルを知る最後の世代。「若い人には“オンリー”も“パンパン”も死語でしょう。日の出町の外れには市の性病診療所もあった」。かつて存在した負の文化だが、「横須賀特有のエッセンスが凝縮されていた。これを後世にしっかり伝えなければならないんです」。ヨコスカ・ドブ板シリーズと銘打って20代から連作してきた版画は300点を超える。今回の展示作品は13年ぶりの再構築。厳選の14点を揃えた。1960年の西逸見町から安浦町までの明細地図も拡大して中央に張り出し、バーやクラブ、旅館の場所を仔細にマーキング。作品の解説とともに当時のドブ板の空気に誘う。
○…5歳のころの強烈な体験が今も目に焼きついている。自宅すぐの外人専用ホテルBROADWAYの窓奥に見えた部屋の中。日本人の女性を肩車した米兵と目が合った。カメラを手にしたこの米兵が飛び出してくると写真を撮られ、後日、1枚を額縁に入れて届けてくれた。その記憶が自身の表現活動の原点になっているという。
○…戦後65年の節目の年で活動再開。「戦争の悲惨さと同時に、軍港をめぐる風俗の歴史も語り継いでいかなければならない」と気を吐く。平和を心から希求している。戦争という嵐の中では、自分たちの活動はままならない。「だから、芸術家の平和に対する願いはいつも強烈なんです」。10月には新作も発表する。創作意欲も再燃、シリーズは終わらない。