浦賀虎踊り保存会 会長 高畑 昌弘さん 西浦賀在住 74歳
裏方に徹し まちと生きる
○…「ほんとに厳しい人だよ」。自らを評した仲間の言葉に苦笑いする。思ったことは隠さず口に出す。そんな忌憚のない物言いが、”厳しさ”を印象づける。一方で、裏表のないその性格こそが、周囲の信頼を得ている。今年の虎踊りも、保存会の仲間たちと無事に終えることができた。
○…生まれも育ちも浦賀。ずっとこの街で暮らしてきた。中学を出てすぐ、養成工として浦賀船渠に入り、造船の世界へ。やがて設計部門に抜擢されると、乗組員の居室から艤装に至るまで、ありとあらゆる設計をした。タンカーにコンテナ船、かつての鉄道連絡船など、携わった船は数知れない。丸々半世紀の勤めを「楽しかった」と振り返る。決して華やかな職場ではなかったが、自分が書いた図面はやがて船となり、世界を駆け巡る。それが一番の醍醐味だった。
○…リタイアしてからは、「勤めていたころより暇がないくらい」地域の活動に没頭。3年前に浜町町内会長に就任し、虎踊り保存会会長を兼ねている。「会長といっても、雑用係みたいなもの」と笑うが、江戸から続く伝統芸能を影で支える、縁の下の力持ちだ。寅年だった昨年は、虎踊りもひっぱりだこ。市内外でじつに5回、舞の披露をした。中でも大仕事だったのが、昨年12月に釜石で行われた全国虎舞フェスティバル。オファーが来たのは開催3週間前だったが、その決断力でゴーサインを出すと、メンバーらの日程調整・宿の手配などを一手に引き受け、”遠征”を成功に導いた。歓待をしてくれた釜石の復興を、心から願う。
○…裏方に徹し、周囲を地道に支えてきたその半生を「裏街道」と表現する。会長の任期はあと1年。「忙しくて大好きな旅行になかなか行かれないんだ」とこぼしながらも、「今までどおり自然体で、この街で生きていければ」と語った。その笑顔は、浦賀の潮風に当たりいっそう輝きを増したようだった。
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