カキの養殖研究にめど 来年度の事業化に大きく前進
カキの水揚げ時期を迎える市東部漁協は、東京湾で横須賀の新名物を作ろうと一昨年3月からの3ヵ年計画で養殖研究を行っている。この取り組みは市の助成を受けており、期間終了を目前にして、事業化へ大きな進展を見せている。
市東部漁協の横須賀支所(新安浦港内)と市・県水産技術センターと共同で進めているカキの養殖研究は毎年、壁にぶつかりながら試行錯誤の連続だった。
今年の水揚げ目標は2万個以上と掲げていたが、夏場を過ぎた頃から不測の事態が続き、現在の見込みは約4千〜5千個ほど。組合によれば「はっきりとした原因は不明だが、夏場の海水温上昇や水中の貧酸素が成長を妨げたのでは」との見解で、余分な付着物を定期的に除去しなければならず手入れの時期や回数・人員配置など既に改善案が検討されている。独立事業として確立するために「手間は極力小さく、収穫は大きく」との効率的な体制作りが進められ、来年の水揚げ目標4万個に挑戦する。
また、これまで種苗の提供元だった宮城県石巻の漁場が東日本大震災による津波で被災。一時は危ぶまれた仕入れも来年度以降の出荷予定分は無事確保することができた。一方、偶然にも同支所で養殖していた種ガキが産卵し種苗として幼生を付着させることに成功したため、横須賀生まれの稚貝が誕生したという嬉しいエピソードもあった。こうした不測の事態に直面しながらも、新たな実績の積み重ねに関係者は大きな手ごたえを感じている。
同組合支所長の斉藤浩昌さんは「まずは3年間の取り組みの成果を活かして生産ラインに乗せ、名産のワカメやコンブと並んで水産業の一角を担えるよう一定数を安定供給していきたい」と今後の展望を語る。
今年水揚げしたカキは来年1月14日(土)午前9時からの同漁協朝市にて試食販売会を開催予定。先の理由で例年に比べ販売量は少ないが、残存するカキの生育状況は「概ね良好」とお墨付き。販売会は毎回、長蛇の列ができる盛況ぶりで「定期購入したい」と待ち望む声もあがっている。
今後は販売力も強化
研究の助成期間は来年3月で一旦終了となるが、市は今後もサポートを行う方針。同支所が事業として運営を行っていくための販売経路の確保や市内外へのPR活動など販売面で支援を続ける予定だ。市の農林水産課も漁業従事者の休漁期の収入源と雇用拡大・観光客誘致による地元経済の活性化・地産地消活動など様々な方面へ与える好影響を試算しており、その波及効果の大きさに期待を寄せている。また、「事業化後に採算が安定してきたら、冬場にしか提供できない生ガキを燻製などに加工し、1年通して流通できれば」と同課担当者は話しており、新港埠頭整備事業で2012年度内の供用開始をめざしている「(仮称)地産地消マーケット」での販売も視野に入れている。
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