安心して任せられる有料老人ホームをどう探しますか? 〜失敗のないえらび方を専門家に聞きました〜
「住み慣れた家で最期まで──」は高齢期の理想の過ごし方となるが、現実に目を向けると健康面への不安や介護の問題など、本人も家族も不安は尽きない。そうした中で「有料老人ホーム」は安心して快適な老後を過ごす(過ごしてもらう)ための選択肢となるが、実際は「どう選んだらいいのかわからない」というのが多くの人の声のようだ。そこで、施設えらびを考える際に知っておきたいポイントをシニアライフに関するサポート業務を行っているラ・ヴィータプラザ湘南の原博子さんに聞いた。
─三浦半島でもここ数年で有料老人ホームはグンと数が増えている。
民間事業者の参入が進んだことで施設の規模やサービスが多様化している。
施設には、元気なうちから入居する「自立型」と介護サービスを伴う「介護型」があるが、それ以外にも高齢者専用の賃貸マンションなどが登場している。一般的なマンションと異なり、各部屋に緊急コールなどが配置されている。夜間でも何かあれば、すぐに対応してもらえる。
一部では、施設内にクリニックを併設しているだけでなく、同じ敷地に老人ホームを設けているケースもあり、介護の度合いなどに応じて転居できる仕組みとなっている。これらは長期的な視点に立って高齢期の過ごし方を考えているもので、「今の生活を維持しながら、その先の安心も手に入れる」といったイメージ。近年は孤独死などの問題もあり、注目を集めている形態である。
─では、えらび方の出発点となるのは?
「自立型」の場合は本人の意思で決めることができるので、じっくりと施設を見てまわればいいと思う。
対して「介護型」は、家族が決めることが比較的多くなる。緊急を要するようなケースも少なくなく、家族には「早くしなければ」とのあせりも出てくる。そうなると、選択の基準は、「近さ」「通いやすさ」「価格」ばかりに目が向きがちとなる。でも実は、最優先しなければならないのは、本人がどんな生活を望んでいるかを汲んであげること。性格やこれまでの生活スタイルを考慮したうえで、選んであげないと入居後の暮らしが我慢の連続となってしまう。
たとえば、独りで過ごすことが好きな人がアットホームすぎる空間にいたら、居心地の悪さを感じてしまう。また散歩好きな人が市街地にあるような施設では息苦しくなる。生活のミスマッチを避けてあげることがとても大切になる。
また入居後に不満を感じていても、家族に遠慮して本心を伝えられずに、大きなストレスを溜め込んでしまう人もいる。家族が(入居後の)暮らしぶりに想像をめぐらすことが必要である。
─費用などは施設ごとにマチマチ。入居一時金は0円〜何千万円まである。
パンフレットには、必ず入居一時金と月額利用料が記されている。最近では、入居一時金を0円とする施設もあるが、月の支払いはやや割高となっている。これは高額な入居一時金を一括して支払うことが厳しい人に向けた制度で、導入する施設は増えつつある。
入居一時金に関しては注意すべき点があって、万一の際の返還の規定については必ず確認しておきたい。万一とは、入居後のトラブルや運営会社が変更になるなどのケース。慎重になる必要がある。
一般的に施設が設定している価格の多寡は、立地条件、建物(室内)や設備のグレード、共有スペースの広さなどに加えて、職員の配置数(介護が必要な入居者に対して介護にあたる職員の数)、看護の体制などで決まってくる。
わかりやすいところでは、食事の内容やアクティビティ(レクリエーション)の豊富さなどが挙げられる。スタッフに対する教育の充実度なども費用とリンクしている部分があり、これがサービスの優劣につながってくる。
支払い能力で施設えらびの選択肢が絞られるのは現実問題としてあるが、本人が必要とするサービスの有無を一番の判断材料にしたい。
─入居する本人とその家族の準備にはどんなものがある?
情報収集は欠かせないが、パンフレットやインターネットだけで決めて欲しくない。気になる施設を見つけたら、必ず足を運んでみることをすすめている。
写真では立派だった料理がいざ口にしたら味付けが濃すぎた、廊下の片隅にチリが積もっていた、などの気づきや発見が必ずある。細かい部分のチェックは現場でないと分からない。入居者の表情などから日常の雰囲気を読み取ることもできる。
逆のケースもある。施設自体は古いが掃除がしっかり行き届いて、スタッフがとても親切で、家族的な雰囲気に居心地の良さを感じることなどだ。直感でピッタリくるかどうかは選ぶ基準としてとても大事だと思う。
紹介業者としてのプロ目線でいえば、施設の設計などもチェック項目となる。ヘルパーステーションの位置など、スタッフが介護しやすい構造(つくり)になっているかどうか。横に長い施設だと、入居者に呼ばれても飛んでいけない。優れた施設は動線がしっかりと計算されている。つまりは、入居者のための配慮が行き届いているという証。細かい部分ではあるが、施設内の臭いなども気にしたい。見学に同行した際などは、必ずチェックしてもらっている。この先、何年も過ごすことになるのだから。
─見学だけなく体験入居などもしたほうがいい?
スタッフや入居者の日常の姿を知る絶好の機会。可能であればどんどん活用すべきである。
ある人の例では、入居後に周囲を見回したら認知症の人ばかりで、「この空間で生活していたら自分も物忘れが加速していくんじゃないかと不安に駆られた」と話していた。こうしたことは、事前に施設をよく調べることで避けられる。
最後に失敗のない施設えらびのアドバイスとして「元気なうちに探すこと、入居すること」を提案したい。
年齢が進むと環境の変化に対する適応力は低下していく。これが体調を崩す原因となるほか、場合によっては認知症を加速させてしまうこともある。引越し作業だって大変。
もちろん、踏み切るには本人も家族もある種の覚悟が必要となる。本当は自宅で過ごすことが一番幸せなのは誰もがわかっている。だからこそ、「なぜ住み替えなければならないのか?」という気持ちの整理をつけなければならない。それにはある程度の時間が必要となる。準備段階として、入居後の生活をイメージしながら多くの施設を見比べておく。そうすることで求める理想に対しての妥協点も見えてくる。余裕の心で臨むことが大切だと思う。
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