横須賀美術館で行われる企画展「街の記憶」に出展する現代美術家 若江 漢字さん 平作在住 68歳
現代美術は日常を映す鏡
○…「現代美術は素人には難解だ」そう思い敬遠する人は少なくない。今でこそ村上隆や草間彌生らが知名度を上げて確固たる地位を築いているが、美しさのものさしだけでは測ることのできない表現方法は哲学的でどこか遠い異次元世界として捉えられてしまっている。そんな社会的評価を憂い、まだ浸透が浅い現代美術を広めるため1994年に「カスヤの森現代美術館」を開館。これまで多彩な企画展を催している。
○…作品テーマは自身の身近にある環境・政治・社会―普通の日常だ。「例えばうちの近所の林が伐採されて家が建つ様子を写真に収めて並べてみる。実はこれだけで立派な現代美術ですよ」と持論を展開。なぜならそこには環境破壊や経済行為が被写体として写り込み、見た者に問題提起や未来の在り方を投げかけているから。「はちゃめちゃで意図がなさそうに見えるでしょ」と笑うが実は作家の率直な心のうちを如実に具現化しているのだ。
○…「美術を知るには美術館で作品を見てほしい」と語り、市民に広く現代美術を知ってもらう絶好の機会として今回の企画展へ期待を寄せる。その鍵を握る突破口が主題である横須賀の景色だ。モチーフに親しみを感じればその裏にどんなシナリオが隠されているのか興味が湧く。すると目に見えない何かを注意深く視るようになる。そんな些細な視点の変化が作品価値を高めてくれるのだ。
○…生まれも育ちも横須賀。現代美術家から見た「横須賀」という街は、いたる所に創作活動の刺激となるインスピレーションが溢れているようだ。繁華街を歩けば当たり前のように米軍兵とすれ違い、のどかな山の畑からは巨大な軍艦が海を横切る姿を望める。「何気ない街並みに、さりげなく国際政治が直結している。本当に面白い土地ですよ」と相好を崩す。横須賀を作品に残すたび自分がここで生を享けた意義と幸せを噛みしめている。
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