美術館活用 私はこう考える 1 「改革は終わっていない」 吉田雄人 横須賀市長
─横須賀美術館の集客策として予定していた企画展が先の市議会で否決された。昨年度の試行企画(ラルク展・70年代音楽展)に関しても賛否があった。
「美術館改革を行っていく上で、様々な試行ケースを積み上げていくことが必要だと考えている。私設の美術館ではユニークな企画の打ち出し方で億単位の収益を稼ぎ出しているところがあると聞く。そうした手法には学ぶべきところが多い。今年度の予算として提出した企画は先駆的な取り組みだったが、事業化できなくて残念だ」
─大衆音楽を幅広くアートと捉えて、美術館で展示することに疑問を持つ人も少なからずいる。
「専門家や芸術家の中には『そぐわない』と感じる人もいるだろう。開設当初は『日本の近現代美術作品の展示』がコンセプトだったが、市長に就任して以来、『横須賀のイメージを高める施設』になることを強く意識してきた。様々な経緯の中で建設された美術館だが、あり方そのものを大きく変えなければならない。社会教育施設ではあるが、集客を重視しているのはそのためだ。横須賀市として、美術館をどう評価されたいのか、ということになるが、『多くの人が訪れていて、収支も悪くない。かつ子どもたちが本物のアートに気軽に触れることができる』これが目指している方向性。トップランクの作品展示を行う施設ではない。市民のニーズもそこにあると認識している」
─市長はかつて、美術館建設には否定的な立場だった。財政の大きな足かせになることなどの問題点を指摘していたが、現在はどんな状況か。
「46億円の建設費の大半を借金で賄った。絵画の購入費も20億円。運営収支は毎年4億5千円万位の赤字。これを切り詰めて現在は8千万円ほど圧縮できているが、数字だけ見たらマイナスとしか思えない。だからといってできたものを壊すことも閉館することもできない。となれば、今ある美術館をどう活用していくか、という話になる。来館者数は初年度の16万5千人をピークに以降は10万人前後で推移。それを昨年は12万3千人まで伸ばすことができた。夜の開館時間延長やコンサート、ウェディングも行った。成功失敗はあるがチャレンジし続ける。改革は決して終わっていない。まだまだこれから」
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市が提出した横須賀美術館の新企画に市議会は3月議会で、内容の詳しい説明がないとして予算化を認めなかった。活用手法も意見が分かれた。関係者に話を聞く。
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