─人口減少、財政難などを背景に全国の自治体で公共施設運営が岐路に立たされている。横須賀では美術館が象徴的な存在となっている。
「大前提として、美術館経営で採算を取ることは極めて難しい。人件費に加え、空調管理にライトアップなど大きな維持コストが発生する。観覧収入では賄えない。行政予算の補てんがなければ成立しない構造となっている。運営経費だけでなく、建設費の償還もある。美術館建設には補助金がつかない。全額起債で賄うことになるが、その分の負担も上乗せされることになる。毎年、億単位の予算を投入する価値があるのかを考えなければならない」
─建設時のそうした議論を経て横須賀美術館は完成した。
「横須賀の人口規模になれば美術愛好家もいるだろう。子どものための情操教育の場も必要となる。一つのモデルとして、六本木に新国立美術館がある。ここは所属作品を持たず、貸館機能に特化している。所蔵作品に係わるコストがかからない。広大な展示スペースといった空間をウリにしており、こうした運営形態もある」
─吉田雄人市長は、指定管理者制度による民間委託も「視野に入れている」と発言している。
「運営の効率化にはベストな選択だ。主に人件費の削減に大きな効果が出せる。ただ指定管理者への移行を論じる前に、美術館の方向性を定める議論が欠かせない。時の為政者の考えを越えたレベルでだ。藤沢市で博物館建設の話が浮上した際、『毎日開いている必要はあるのか』と問いかけた。博物館の使命は、地域の歴史と文化に関する史資料を保管・修復・調査研究し、次世代につなげること。展示というのは補助的な役割でしかない。であれば、研究成果の発表は年に1〜2回で十分。そうした発想で駅前デパートのスペースの一角を活用する30日展示というスタイルが誕生した。ハコよりも機能にこだわる考えが大切ではないか」
─固定概念は捨てる、ということか。
「佐賀県武雄市の図書館(蔦屋書店、スターバックスと同居)が話題をさらっている。図書館を地域のコミュニティセンター化するモデル転換で大きな成功を収めた。乱暴な発言だが、横須賀美術館を休館してみてはどうか。市民があらためて美術館の存在意義と向き合うきっかけになるはずだ」
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横浜市役所で市長室、企画局などに勤務。自治体の経営マネージメントを研究。民主党政権下の行政刷新会議で事業仕分けに参加。横浜市在住
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