犬猫との交流で認知症予防 老人ホームでペットと共生
福祉サービスに関する先進的な事業を表彰する「かながわ福祉サービス大賞」で、太田和の特別養護老人ホーム「さくらの里山科」が特別賞を受賞した。同ホームが取り組む『犬や猫と一緒に暮らす試み』が評価を受けた。
「犬と触れ合うとなんだか元気が湧いてくるんです」―そう話すのは、車イスで生活する女性入居者。現在、犬が7匹、猫10匹が同ホームで暮らしている。みんなが集うリビングフロアを自由に歩き回る姿はまさに「家族の一員」そのものだ。
動物との生活は、入居者の精神・身体面にさまざまな効果をもたらす。夜、なかなか眠れなかった入居者が、慣れ親しんだ犬と一緒に寝ることで安心してぐっすり眠ることができたという。車イスの入居者がお気に入りの猫を探してフロアを移動することは、それだけで適度な運動になる。また動物との生活は、認知症予防効果も期待されている。人によっては感情が乏しくなる認知症だが、動物との触れ合いを通し脳が活性化され、平板化していた感情表現に変化が現れることも。自然と家族や職員との会話量も増えていくという。
一人暮らしで動物を飼う高齢者は、自身にもしものことがあったとき、最悪の場合、共に暮らしてきた”伴侶”ともいえるペットを保健所に受け渡さなくてはならない。そのためペットの行く末を案じ、新しく飼うのを諦めるケースも多いという。施設長の若山三千彦さんは、介護現場で同様のケースを幾度となく目の当たりにし、「高齢者が安心してペットと暮らせる環境を整えたい」という思いを抱いてきた。
ペットのトイレや予防接種など、衛生面の管理は徹底している。動物が苦手な入居者にも配慮し、ペットが行き来できるのは限られたフロアだけだ。同ホームで暮らす犬や猫は、ほとんどが保健所からの引き取り。中には東日本大震災で飼い主を亡くし、心に傷を負った犬や猫もいる。
「限られた時間だけ動物と触れ合える施設やサービスはあるが、特別養護老人ホームで一緒に暮らせるのは全国的にも珍しい」と若山さん。”家族としてのペット”の受け入れを今後も広げていく意向だ。
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