新年の幕開けに、本紙では横須賀市の吉田雄人市長にインタビューを行った。「選ばれるまち」をスローガンに掲げた2期目の政策の進ちょく状況や懸案となっている人口減少問題、意欲的に取り組むテーマなどを率直に語ってもらった。
(聞き手/本紙編集長 安池裕之)
英語教育の先進性も発信
──まずは2014年を振り返っていただきます。
「民間研究機関の日本創生会議が発表した『消滅可能都市』に大きな衝撃を受けました。これには該当しないものの、横須賀市も20〜30代の女性が4割以上減少するとの試算でした。2013年の横須賀市の転出超過数が全国1位という不名誉な結果も公表され、人口減少問題の深刻さを突きつけられました。要因を分析したところ、転出率は人口増の藤沢市より低く良い数値なのですが、一方で、転入者が圧倒的に少ないということがわかりました。施策としてこれをどう解消していくかが大切であり、ポイントを絞った発信活動を考えています。具体的には昨年完成した『横須賀魅力全集』を活用して、横須賀が通勤圏内になる市外企業に勤務する方々へ、「住むまち」としての魅力を発信することや京急線、相鉄線などで交通広告を活用した横須賀の魅力キャンペーンを展開するなどの戦略的な発信を強めていきます。今年から始まる基地内留学に加えて、市内の外国人家庭にホームステイできる仕組みが実現すれば英語教育の先進性のアピールにつながります。都市イメージを向上させながら転入増加を図っていくのです。谷戸の空き家対策として昨年立ち上げた『空き家バンク』は好評です。今年は対象エリアを広げて、谷戸の定住促進をさらに一歩進めます」
「常にイノベーションの発想」
──横須賀経済の中心である中央地区では、新しい街の姿が見えつつあります。
「今秋完成予定のタワーマンションの工事が着々と進んでおり、これを軸に街の景色がガラリと変わっていくでしょう。昨年、新たに設立された若松町1丁目地区(横須賀プライム周辺)と大滝町1丁目地区(さいか屋大通り館跡地)を含めて、中央地区では4つの協議会が再開発を目指した活動を行っています。中央大通りに接している土地の容積率を600%から800%に割り増しし、併せて、その周辺地区の高度地区制限を廃止する規制緩和を行い、投資を呼び込むための条件整備をしていきます。中心市街地の拠点性を高める狙いもあり、背景としているのはコンパクトシティ的な考え方です。若手商店主グループ(YDC)の動きも活発化していて、市との連携で今年中には中央大通りを中心とした集客イベントを実現させたいと思っています」
──「ナショナルトレーニングセンター(NTC)拡充施設」の誘致にサイクリストをターゲットにした「自転車半島宣言」、サブカルをテーマにした「Sプロジェクト」など、昨年は地域活性化に向けた種まきがいくつかありました。
「NTCでは、誘致に向けた地元組織が立ち上がりました。東京都北区にある既存施設に隣接させるとの話も聞こえていますが、そこは幅広い競技に対応できる敷地面積がありません。その点、横須賀であれば馬術のクロスカントリーから投てき種目、水上競技までスケール感のある提案ができます。多くの皆さまの力をお借りしながら誘致活動を進めていきます。自転車を活用したサイクリストの誘客事業ですが、一部不備のあったパンフレットは春先のシーズンインを前に再配架します。ロードバイク専用ラックの設置を求める声もありますが、それ自体を目印やモニュメントにしてルート化するといったアイデアを個人的には持っています。4市1町の市長サミットで提案してみようと考えています。ゲームやアニメに着目した集客はこれまでなかった切り口。「艦これ」をはじめとする艦船ブームの真っただ中で今年は、海上自衛隊の『観艦式』があります。これに絡めた仕掛けづくりを模索していきます。スマートフォンゲーム「イングレス」を用いた観光キャンペーンも新たな挑戦としてスタートしています」
──市民サービスに直結する話として「施設配置適正化計画」の素案が示されました。
「統合・廃止の具体的な施設名を提示したのは、スピード感を持って取り組む必要があるからです。人口減少、財政ひっ迫の現状下で今の施設規模は過剰です。今年は保育園、市営住宅といった分野別に計画を策定していきます。複合化という話も歓迎したい。老人保健センターでは、お風呂を提供していますが、これがコミュニケーションの場になっているとするなら、民間の銭湯でも役割は果たせるはず。ハードのニーズをソフトのサービスに置き換えて維持していく発想も必要です」
──中学校の昼食(スクールランチ)の充実に向けた動きも始まりました。一方で完全給食を求める声も根強くあります。保護者などを交えた検討委員会を立ち上げてはいかがでしょう。
「スクールランチの充実策は来年度中の実施を目標に検討を重ねていますが、価格設定や食物アレルギー対策、事業者の体制などの課題があります。低調な注文率も問題。今月に予定している試行の結果を踏まえて、よく見極める1年にしたいと思います。現時点では、完全給食は財政的な負担が大きく、踏み切ることができません」
──政府の方針で「地方創生」が掲げられました。これについて思うところはありますか。
「中身の議論が見えてきませんが、自由度の高い交付金などを期待しています。横須賀では今まさに取り組んでいるIT分野の企業を誘致する『横須賀バレー構想』や、最近課題と感じている事業承継を支援する仕組みづくりなどに活用できればと思っています。廃業が進むと雇用や技術伝承に支障が生じ、地域経済を収縮させてしまいます。商工会議所や金融機関とも連携していきたいと思っています」
──新年の市政運営のキーワードを教えてください。
「横須賀製鉄所(造船所)創設150周年を迎えます。市民の郷土愛の醸成と観光集客の2つの観点から事業を展開していく計画です。米海軍横須賀基地内に現存する現役のドックの開放を複数回予定しています。キーワードにしたいのは、”イノベーション”という言葉。新しい価値の誕生には破壊が伴います。基地内留学の仕組みなどは、従来の基地の概念を乗り越えたからこそ実現したものです。勇気と覚悟をもって新しい挑戦をし続ける必要性を強く感じています」
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