「日本育桜会」の理事長を務め、市内を中心に桜の植樹活動を行う ⻆田 征夫さん 浦上台在住 75歳
桜に宿る生命力信じ
○…気候が暖かくなり、桜のつぼみがほころび始めるこの季節。市内の山道への植樹や、小学校に桜の苗を提供している。NPO法人を立ち上げて4年、植えた数は約200本。今月、中央公園で行われた小学校の卒業記念植樹会では、5mの苗を1本、児童と共に「立派に」立たせた。「『自分が植えた木』には愛着が湧く。大人になったとき、ふと故郷を思い出すきっかけになれば」。土が温まり、根が張りやすくなるこの時季は、植樹にはもってこいだという。
○…熊本県出身。土木作業員として全国を転々とし、32歳のとき縁あって横須賀で独立した。順調に業績を伸ばしていた矢先のバブル経済。世の中が浮足立つ中、意外にも「あの時期が一番辛かった」と声がくぐもる。受注が増える一方で、建築業界を襲った深刻な人手不足。半年後には人件費が数倍にも膨れ上がることを危惧し、泣く泣く社員を手放したこともあった。「自分たちにできる仕事を、堅実に」。バブル崩壊後、その真摯な体制が功を奏すことになる。
○…数年前、福祉施設の建設に際し、入口に厚意で桜の苗木を5本植えた。それを見ていた高齢者が、まだ細い枝葉を見上げて「花が咲くまでは頑張ろうかな」とつぶやいた。「桜の生命力が、人に連鎖した瞬間だと思った」。この感動を多くの人に広めるため、自社の機材を利用し、ボランティア活動を開始。同年代の仲間約10人に加え、会の目的に賛同し、苗を購入・寄付する会員は120人に達した。
○…自身が社長を務める建築会社は、2人の息子が盛り立てている。「『親父、あとは俺たちに任せてくれ』と言ってきたら、譲ってもいいかな」と相好を崩す。春の訪れを告げ、「晴れやかな気持ちにさせてくれる」桜。一昨年は復興支援のため、仙台にも苗木を贈った。会の名の通り、「日本中に桜を植えられるように」。熱い展望を胸に秘める。
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