タウンニュース横須賀編集室では、2016年の市政展望を吉田雄人市長に聞いた。人口減少を最重点課題に掲げる吉田市長は、地方創生戦略と絡めて対策を推し進めるとしたほか、久里浜港湾施設の活用や観光戦略を語った。(聞き手/編集長 安池裕之)
「百条委」誠実な態度で
――まずは昨年1年を振り返っていただきます。
「大きな括りでは『地方創生元年』と言われた年でした。地域活性は主に国が補助金で地方を助ける形で行われるのが通例でしたが、地域の実情や意欲に応じて交付金が支給される仕組みへと変わってきました。現在、市としての総合戦略を策定中です。やはり人口減少克服に向けた中身となっていくでしょう。現在も働く場所の確保、市街地の再開発、子育て環境の充実。それらを踏まえた都市イメージの発信に取り組んでいますが、これの延長線上にあるものと考えています」
──県内の話題では、江の島が東京五輪のセーリング会場に決定しました。
「東京五輪にまつわる部分では、市ではナショナルトレーニングセンター(NTC)誘致に取り組んでおり、追い風にしたい。昨年末に遠藤利明担当大臣も視察に訪れました。都市へのアクセス、広大な敷地、海のゲレンデを有する点などをアピールして呼び込みたいと思っています」
旧軍港4市連携で観光戦略
――横須賀製鉄所(造船所)創設150周年の記念イヤーでした。
「製鉄所の成り立ちなどを社会科教材に盛り込んだり、富岡市との友好都市提携を行ったりと意義ある1年でした。観光面の相互連携などがこれからの課題。製鉄所建設に尽力した小栗上野介の終焉の地である高崎市(旧倉渕村)も交えた3極での展開などを旅行会社も交えて考えたいと思っています。150周年とは異なりますが、新しいご当地グルメとして、『海上自衛隊カレー』が誕生しました。観光集客の面で海上自衛隊と連携が取れたことは大きな一歩です」
――市長公約に関して、中間検証の発表がありました。2期目の任期も総仕上げとなります。
「折り返し点での政策の達成率に68・8点と高い評価をいただきました。残りの期間でより市民満足度の向上につなげていくことを意識したいと思います」
――市長のアイデアである中央大通りの「ホコ天プロジェクト」が見送りとなりました。中学校昼食の「スクールランチ」も利用率は低調で、完全給食を望む声が依然としてあります。
「ホコ天は商店主らがエリア全体で賑わいづくりに乗り出すきっかけとして提示したものでした。一過性の施策ではありません。中身は違ってもこの方向性で引き続き応援していきます。『スクールランチ』は、アンケートの集計から見るとニーズの読み違いがあったかもしれません。中学校の昼食については、詳細な分析をして、ニーズの把握に努めていきたいと思います」
──企業誘致では実績を上げています。
「年に1社を公約に掲げていましたが、昨年暮れに大手2社の進出が決まり、計5社の誘致に成功。雇用拡大、定住促進を目的としていますが、違った視点の取り組みにも着手しています。「クラウドソーシング」と呼ばれるもので、インターネットを通じて仕事を請け負う仕組みです。時間と場所に捉われない、新しい働き方のスタイルを根付かせていきたいと思っています」
――三浦半島サミットも新しい展開がありました。
「観光を切り口にスターしましたが、自然環境、在宅医療や介護の分野で議論のテーブルが立ちあがりました。県の方針にならった『未病を治す半島宣言』も行い、取り組みを具体化させていきます」
――全国の自治体が対応を迫られている人口減少の問題。来年(度)中に40万人を割りそうです。
「人口減少には『自然減』と『社会減』の2つがありますが、市は後者の対策に注力しています。子育て世代の転出をいかに食い止め、転入を伸ばせるか。30〜40代が横須賀で子育てをしてくれれば自然増に多少なりともつながるはず。小児医療費無償化を小学6年生までとしたのもそのためです。利用料が課題となっている学童保育に対する助成拡大も国の補助金を活用しながら進めていきます。その一方で、人口規模にあった行政のダウンサイジングも考えなければなりません。施設配置適正化計画はそこにつながります。市民の合意形成を大切にしながら着実に進めていきます」
――久里浜の港周辺の土地利用が大きく動き出す年になりそうです。
「79億円を投じた埋立て用地の一部です。有効活用が積年の課題でしたが、今年の秋以降、温浴施設と冷凍ケーキ工場が開設されます。すでにコロッケ工場と水産加工場があり、これらに直売所が併設されれば集客の拠点にもなります。これと同時に定期便の誘致を含めたポートセールスも展開していきます」
――観光集客では旧軍港4市(横須賀市・舞鶴市・呉市・佐世保市)で「日本遺産」への登録をめざしています。
「旧軍港4市の近代化遺産を活用しながら4市でスケール感のある展開を模索していて、15年度中の申請を予定しています。これに絡む部分では千代ケ崎砲台跡、走水低砲台跡の公開に向けた準備も進めています」
――最後に議会が設置した「百条特別委員会」について、市長の率直な気持ちを聞かせてください。
「市政をより良い方向に導くことが調査の目的ですので、誠実な態度で臨んでいます。審査は継続していますので、議会には一層真摯に対応していきます」
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