万代会館をテーマにした絵本「まんだいこんのかいすいよく」を製作した いのうえ ちひろさん 馬堀海岸在住
絵本は「発見」伝える手段
○…「住宅街の中に現れた昭和の雰囲気に驚いた」―。万代会館の第一印象だ。絵本専門店の店主に連れられて、足を踏み入れたのが昨年初めのこと。これを遺した万代夫妻の想いを知り、「子どもたちにも親しみを持ってもらいたい」と、絵本を製作。9月に発表したのが「まんだいこんのかいすいよく」だ。
○…大根やみかん・キャベツ・いちご―といった地場農産物が主役。ふんわりとした画風も合わさって、「地元絵本」の人気も上々。原画展や続編への展開、小学校への寄贈など、一気に活動が広がった。「日常の体験や感じたことが、絵本につながっている」。結婚を機に横須賀へ居を移して6年。「起伏があり、風景がおもしろい。まだまだ知らない姿があると思うと、楽しみ」。おっとりと話す眼差しも、柔らかだ。
○…ドラえもんを読んで”あったらいいな”の世界を空想し、「漫画やお絵かきが大好きな、変わった子どもだった」と自嘲気味。短大国文科卒業後は、本人曰く「人生に迷っていた」時期だったという。観光地での住み込みバイトや派遣OLを経て、パステル画教室の門を叩いた。絵本作家養成のワークショップに通い、編集や装丁のラフを作って講評を受ける日々。構図や話のつながりなど、絵本の醍醐味を体系的に学び、ようやくスタートラインについた。パステルや色鉛筆を用い、春風をまとったような温もりの作風は、柔和な佇まいそのもの。今では、「いろんなことを少しずつ」と、布を使った製作や豆絵本も手掛ける。
○…千葉から市内に転居間もない頃に応募した、三笠ビル商店街のシャッター画。後になって、自分のデザインが採用されていることを知った。灯台や海など、横須賀の第一印象を表したもの。絵本や創作は「自分の発見を周りに伝えていく手段」。幼少期に抱いた、ページをめくる”ワクワク感”を忘れずに、創造の世界を広げ続ける。
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