猿島わかめのブランド化や海産物の6次産業化に取り組む 譲原 亮さん 安浦町在住 42歳
「海の畑を育てる」責任感
○…約50年前に、自身の父親たち漁師が始めた猿島わかめの養殖。水質や潮の流れなど好条件の漁場で、風味や柔らかさも逸品。しかし、重労働ゆえに後継者も減り生産量も低下、これを危惧した地元飲食店経営者らが立ち上げた「猿島海畑活性化研究会」と手を携え、知名度向上に向けて取り組んでいる。
○…早獲りの猿島わかめを「さるひめ」と名付けたブランド化もその1つ。始まりは4年前。「漁師の感覚では、新芽を食べるなんて思いつかなかった」と振り返る。1月初旬に”解禁”し、期間限定で売り出す戦略。飲食店が創り出した新たな価値に応えて、生産者として「海の畑を育てていく」という責任感が生まれた。流通やPRを研究会が担うことで、漁師は生産に専念できる。今年の種差しも今月半ばから始まる。「販路が拡大して市場に定着すれば、安定収入につながる」と期待する。
○…新安浦港で武丸を操業。20代後半までは溶接業など違う世界に身を置いていた。家業を初めに継いだ兄が他業界に転職したことから、バトンタッチ。折しも、景気は右肩下がり。網を入れれば大漁だった頃の面影はなかった。漁協の横須賀支所で力を入れたのが、カキの養殖。研究と実践の試行錯誤を繰り返し、冬場の目玉商品として軌道に乗りつつある。漁場の変化に対応するのも、今を生きる漁師の役目。近年手掛けているのは、サメやエイの6次産業化だ。加工・販売の事業計画の認定を受け、市場拡大を狙う。一方で人材確保にも頭を悩ますが、先ごろ、県外から漁業を志す若者を迎え入れた。新たな担い手のためにも、「養殖や加工事業などでブランド化を定着させ、輪を広げていきたい」と意気込む。
○…かつての安浦港はいまの聖徳寺坂下・国道16号線付近にあった。原風景を記憶する人が少なくなる中、「東京湾の海の恵みを大切に育てたい」―。その一言に、重みがあった。
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