昨年11月に、約1カ月をかけて市内で撮影が行われた映画「スカブロ」。主演の兄弟を窪塚俊介さん(海野龍助役)、RUEEDさん(海野虎太役)が演じている。横須賀で生まれ育った実の兄弟であり、それぞれ俳優・レゲエDJとして活躍する。作品への想いや横須賀×映画の将来は―。矢城監督を交え、3人に語ってもらった。(本文中、敬称略)
――「まるごとよこすかの映画をつくる会」が立ち上がって3年余り。監督が構想から20年近く温めてきた「地元発の映画」です。
矢城 やっと終わった、という感覚。ひとりでは映画は作れない、と改めて感じている。(窪塚)俊介さんが、主役を受けてくれたことで昨年春ごろから、ようやく岩が動き出した。
――「オール横須賀」にこだわり、地元を舞台にした映画へのオファーでした。
俊介 横須賀で映画を撮る…これは、他人ごとではないなと感じた。監督には、横須賀人として可能性を提示してもらえた。自分たちのルーツと、監督の描く横須賀を融合できたらおもしろい、という想いが高まりました。
弟役は、試行錯誤がありましたが、地元の仲間と相談して、自分の弟がいいのでは、と監督に相談しました。本人は興味がないかと思ったけれど、役作りに”しっくりいく”と思って。(監督に)断られたら、この話は難しいな、とも。
RUEED 兄と話していて、映画で演じることが”どのくらいの事”か、はじめは分からなかった。(三兄弟の)兄2人が役者で、自分が演技をすることはないと思っていた。弟役という以外に、音楽をやっている…という役柄のリアルな背景もあり、演技にもすぐ入り込めた。
――久しぶりに、横須賀にどっぷり浸ったようです。
俊介 楽しい1カ月でした。話し合いや衝突も、良い現場だからこそ生まれるもの。毎晩、実家で2人で台本に向き合って熱くなってしまって。盛り上がって、ついには真夜中に監督に電話するほどでした。弟も役柄に自然体で入り込んでいて、表現者としても刺激になった。
RUEED 兄を含めて、周囲に引っ張ってもらえた。自分の想いも取り入れてもらえて、楽しかった。(音楽のように)セッションして高めている感じが新鮮で、ぶつかっていくという感覚もあって夢中だった。濃密な1カ月だった。
矢城 そう。映画は濃密な体験の集まり。ここまで、演者やスタッフが集中できたのはすごいこと。自分がいままで経験してきた現場にはなかった感覚でした。
――3人にとって、地元横須賀はどんな街ですか?
俊介 (兄弟の)兄と弟2人には音楽・レゲエという横須賀での”ルーツ”がある。自分は俳優として、普段はあまり地元を意識することはない中で帰ってきた。撮影をしていて、率直に思ったのは、こんなにも地元が協力してくれるものなのだ、と。横須賀の街の温かさや、愛を感じました。
RUEED 自分にとって横須賀は”愛で動いている街”だと思っている。ロケーションでは、やはりマボチョクとどぶ板が「ザ・横須賀」というイメージ。
矢城 半年近く、市内をくまなくロケハンしてきました。今回の作品で良い出会いだった場所は、路地裏の奥。多くの映画やドラマでは、場面を切り張りしていることが多いけれど、この街には、ふだんの息遣いを感じられる場所がたくさんある。もちろん、フォトジェニックな眺望も。これらの”良い絵”を作品に投影できていると思う。
――今後のそれぞれの活動にむけて、「スカブロ」がどんな作品になっていくと思いますか?
俊介 俳優としての通過点であり、地元に大きな石をどーんと置いた形。ここから、それぞれが次のステージに。そして戻って来られる、ハブのような作品になれば。
RUEED 初めての”乗り物の出発点”。良い形で乗り込めたと思う。
――監督にお聞きします。「横須賀で映画を撮ること」の意義は。
矢城 実際に活動を始めて、半信半疑、撮れると思っていなかった人も多いと思う。この業界では、クランクイン直前に計画がなくなったり、撮り終わっても作品にできないこともある。「映画で盛り上げたい」と手を挙げたところへ役者・スタッフ、ボランティアが想いを同じに集まってくれた。
協賛など資金面でのサポートも、あと少しのところまできている。これは”地元発”に対して、「何かおもしろそう」「挑戦を支えたい」という期待の表れだと思う。撮影でも、多くの人や店に協力してもらった。好意に甘えてしまう部分もあったので、良い作品で恩返しをしたい。
――いわゆる「映画でまちおこし」という動きとは、少し一線を画す作品です。
矢城 街・人・空気―何が欠けても成り立たない。ひとりひとりの”想い”で、やっとたどり着いた。「地域の力」の手ごたえを感じている。
今回、完成に近づいたことで、地域映画として横須賀で撮って盛り上げて終わり…ではなく、次の段階に繋がればいいなと思う。街が主役の映画は、暮らしている人へのリスペクトでもあると考えている。観客動員の目標は2万人だったが、5万人くらいに欲が出た。地域の人を巻き込み、昇華させていきたい。
進捗状況としては、これから編集作業に入り、市内での上映は春以降になる。
――2月には映画をテーマにした活性化のシンポジウムが行われます。
矢城 横須賀は映画を介したディスカッションができる街だと思う。登壇する錦織監督も地域にこだわった作品で評価されている。今回の撮影で、ロケーションとしても魅力が詰まった街であると再確認できた。もっと多くの人に映画が撮られていてもいいはず。今後、「スカブロ」に続く作品に期待したい。
あとは、映画離れと言われる中で、「横須賀の人間は映画が好き」という雰囲気を醸成できれば。観客にはもっと作品に近づいてほしい。
俊介 1人あたりの鑑賞作品数は、年間2・7本と言われている。話題の大作だけが映画じゃない。
RUEED 今までは観る側だったけど、演じてみて良い機会となった。自分も表現者として、音楽だけでなくジャンルを分別せず挑戦していきたい。
矢城 スカブロの製作は、そういった数々の”きっかけ”づくり。この街から映画が生まれて、地元の人が心待ちしている――。そんな循環が増えれば、街が元気になるはず。もっとも、良い絵はたくさんあるのだから。
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