金田湾の若手漁師でカキ養殖に取り組む 飯嶋 武さん 金田在住 38歳
養殖で拓く漁業の活路
○…県内有数の好漁場で知られる金田漁港。寒風吹きすさぶ中、冷たい水をものともせず手塩にかけて育てる養殖のカキを手に「いいでしょう」と、思わず顔をほころばせる。消費者に喜んでもらえる金田の新しい名産づくりと閑漁期の収入源創出の両立を掲げ、試行錯誤の日々が続く。「パイオニアとして失敗できないプレッシャーはあるけれど、不安より楽しみの方が大きい」。すべては消費者の「美味い」のためだ。
○…20歳のとき、漁師である父親の背中を追って同じ道へ。世間的に一次産業は「カッコ悪くてツラい」というイメージが先行しがちで昨今も担い手不足が叫ばれて久しいが、漁師以外の職業は眼中になかった。「自分がやる気になれば何でもできるところが魅力。でも、最初はゲーム感覚もあったかな」と笑う。広い海の中から目当ての獲物を見つけ出す高揚感。まるで宝探しのようなワクワクとした気持ちに魅了された。
○…幼い頃から見てきた海の仕事には誇りを持つが、自営業従事者ならではの心の葛藤を吐露。親子船「寺下丸」で漁に出ると、どうしても”船頭の父の手伝い”という感覚が拭いきれず、1人の漁師としての心の充足感は低かったという。自身の手で成果を生み、漁師の意義を見出すには今までにない新しいことをやろうと発起。「漁師といえども気持ちは起業家に近いですね」。カキ養殖の原動力もここから生まれた。
○…若手漁業者が減っている今、希望を持って就漁できる環境を作るのも役目の1つ。やり方次第で成長産業になりうるのだと自らの取り組みで体現しようと奮闘する。なぜそうまでして尽くすのか尋ねると、「やるか、やらないか。選択を迫られた時は、まず挑戦してみるがモットーだから」と、こともなげな様子。そんな熱い思いは徐々に共鳴し始め、今では興味を示す飲食店も出てきた。思い描く名産化の夢はカキの成長とともに順調に育っている。
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