「さかえ書道教室」主宰で、12月から都内で開かれる作品展に書道作品を出品する 榮(さかえ) 貴代(きよ)さん 天神町在住 78歳
”書の道”探究、生涯現役
○…「字を書いていると納得がいくまで時間忘れて没頭してしまうの」。そう微笑みながら語る傍らには、たくさんの半紙の山々が連なっている。書道と言っても筆・半紙といった道具や書体の違い、墨色・墨継ぎ・緩急・飛白・空間などの手法によって作品の印象はガラリと変わる。偶然の風合いと緻密な計算により出来た作品は1つとして同じものはなく、一期一会。「無心になれるのが魅力」
○…きっかけは幼少期、離れて住む祖父母との文通だった。字を書くのが好きで、手紙のやりとりを介して変体仮名の読み書きを習得。誰から書道の基礎を教わったわけでもなかったが、その腕前は正月になると学校の書道部から声が掛かったほどと往時を懐かしむ。上達の近道は「お手本をよく見て、数を書くことが一番」。友人の誘いで30代半ばから本格的に教室へ通い始めると奥深さに魅了。勤め先の退職を機に、自らが主宰する教室を79年に開講。以来、指導者とアーティストの2つの顔を持つ。
○…パソコン・携帯端末、インターネット・メールなどの普及で日常生活において、字を書く機会が減っている昨今。「目から入る情報や文字を形でとらえ、筆順が疎かになる人が多いように感じる。字が崩れてしまい、美しくならない」と憂いの表情を浮かべる。自身が書道を始める契機となった手紙文化もデジタルに取って代わられ、「手書きには手書きの良さがある。時代とは言え寂しいもの」。友人知人から届く季節の便りを感慨深げに眺めた。
○…国内の活動に留まらず、これまで各国の文化交流を冠した美術展に参加。幾多の受賞歴を誇るが、創作意欲は旺盛で喜寿を過ぎても衰えを見せない。12月から都内で始まる2つの作品展に出品。さらに現在は個展開催をめざして少しずつ書き溜めており「卒寿の記念に出来たら」。書が持つ表現力と美しさに魅せられて半世紀以上。「身体が動く限り現役です」
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