観光客の増加や地域活性化などに寄与した事業者・団体・個人を表彰する「第7回かながわ観光大賞」で三富染物店(三崎)が審査員特別賞を受賞した。江戸時代から続く伝統技術を知ってもらおうと観光客向けに行っている大漁旗製造体験が評価。先月25日に黒岩祐治県知事から表彰状が贈られた。
1833年創業の三富染物店は、もともと幕府の御用職人として戦ののぼりなどを製造。現在は県内で唯一の染元として、職人が手作業で大漁旗や飾り旗を作っている。
「体験を始めたきっかけは、染物をもっと身近なものとして知ってもらうにはどうしたらいいかという思いから」と話すのは同店の三冨由貴さん。従来、販売に終始した大漁旗に、見る・体験する・土産として持ち帰るという3要素を合わせた。大漁旗の枠を超えた付加価値を提供することで、日本人のみならず外国人観光客にもアプローチできる大漁旗販売店をめざしている。
気軽さ受け、集客増
製造体験は、近年増加している旅行先での体験ニーズを受けて昨年から始めた。のべ235人が参加し、その数は日々増加傾向にある。また、三崎観光の土産品の開発にも注力。高額で敷居が高いイメージの染物を観光客が気軽に購入できるようにと、安価でデザイン性が高い大漁旗をモチーフにした手ぬぐい(各700円)を制作。京急の企画乗車券「まぐろきっぷ」との提携を追い風に売上は徐々に伸び、今では月250〜300枚ほど販売。観光客から人気を集めている。業種柄、それまでほとんど見られなかった若い女性客の来店も増え、販路の拡大にも一定の効果があったという。
ほかにも三浦市と連携して教育旅行の生徒を2008年から受け入れ、のべ約80校が訪れてクラス旗などを作ったり、製造場所を間近で見られるよう店舗の開放を行っている。「印刷で出来ると思っている人も多く、手作業の様子が見られると好評」と三冨さん。
日本ならではの体験を求める訪日外国人からも評判も高く、観光コンテンツとしての手ごたえは十分。「体験を通じて江戸時代から続く伝統を多くの人に伝えていきたい」と今後の展望を話した。
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