勤続26年に幕
現在、国内でわずか数台しか稼働していない希少な消防車両(はしご車)が、三浦市消防署での26年の役目を終え、今月引退を迎えた。
重厚感ある落ち着いた朱色と年代を感じさせる車体デザイン、「スリーポインテッド・スター」と呼ばれるひと際存在感を放つエンブレム。この車両が同署に導入されたのは、1991年3月。車の基礎となるシャーシはメルセデス・ベンツ社、消防装備等の艤装はカールメッツ社製で、全長約10m、車幅約2・5m、総重量15t。総排気量は1万5000ccにもなり、山坂の多い三浦でも威力を発揮できる桁違いの性能を有していた。隊員や救護者を乗せるカゴ部分の安定性を保つ自動調整や、高所だけでなく河川や海といった地上よりも低い位置(マイナス角)にはしごを伸ばせる機能を搭載。当時の技術の粋が集まっていた車両だったという。
県内では藤沢や足柄消防署などでも使用されたが数年前廃車に。もともと全国で導入台数が少なく、時代とともに1台また1台と姿を消していき、希少さが増したことで愛好者の間では知られた存在だった。
同市ではおもに4階以上の中高層建築物での消火・救助活動に用いられ、出動実績は約40回。そのうち2回、火災現場で放水活動を行った。これまで大きな故障もなく年次点検を繰り返すことで安全運行を維持しながら、移りゆく街の防災と変遷を見守ってきた。
「活躍に感謝」
「『ありがとう』。その一言に尽きる。三浦のためによく頑張ってくれたと思う」―。
勤続26年で幕を下ろしたかつての”相棒”に労いの声をかけるのは、同署で警備課長を務める武田幸男さん。武田さんは、はしご車の第1号機関員として3人の同僚たちと職務にあたった。約半年、消防学校での訓練や運転研修を行ったといい、「任されたことが誇りでした」。長さ30mのはしごの扱いにくさには苦労したが、機関員らは清掃やメンテナンスなどで日々愛情を注いできた。
防災訓練や出初式などで街に出ると、住民から「ベンツの消防車」として注目を集めたことも数知れず。今回の引退の報を聞き、県外から写真撮影に訪れたファンもいたそうで、署員や市民だけでなく、多くの人から愛されていた車だった。「珍しく三浦に雪が降った日、チェーン巻いて走っていった姿を思い出します」。武田さんは記録写真を収めたアルバムをめくりながら懐古した。
三浦版のローカルニュース最新6件
|
原画ずらり上村一夫展3月29日 |
|
|
|
|