「三浦半島酪農組合連合会」の会長を務める 石井 廣さん 葉山町上山口在住 45歳
安全で美味しいものを
○…肉質によって15等級にランク分けされる牛の中でも、三浦半島で生産される上位4等級の牛だけを認定した「葉山牛」。誕生しておよそ30年。近江牛や米沢牛などに比べて出荷数は年間200頭ほどと少ないものの、いまや立派なブランド牛のひとつになった。「甘みがあるのはもちろん、脂の融点が低いからしつこくない。自慢の牛たちですよ」と牛舎を見渡しながら笑みを浮かべる。
○…元々はサラリーマンだったが、結婚を機に転身。ゼロからの出発だったが、同世代の農家にアドバイスをもらいながらノウハウを学んできた。今では夫婦で二人三脚、約100頭の牛の世話にいそしむ日々。「365日休みなしですけどね。消費者に『おいしい』と言ってもらえれば苦労も吹き飛びますよ」。牛をリラックスさせるため牛舎にラジオを流したり、飼料にワラやおからのほか、炊いた米を与えるなど徹底したこだわりぶり。昨年は全国から240頭が出品される品評会で7位にあたる優秀5席を受賞した。「畜産人口は年々減る一方。品評会でいい評価をもらって、それが畜産の活性化に繋がれば」。
○…天候や社会問題などの影響を受けやすい業種とはいえ、昨年は口蹄疫、今年は放射能問題と立て続けに頭を悩ませられた。一時はトラックに葉山牛という看板をつけていただけで敬遠されたことも。「全頭検査はもちろん、与える飼料にも細心の注意を払っている。安全だということが消費者に伝わらないのは何よりも辛い」と表情を曇らせる。
○…牛を出荷する時、必ずすることがある。積み込まれる牛の頭をなでながら心の中で「今度は、牛に生まれてくるなよ」と呟く。生き物を生業とする仕事だからこそ、命をもらっているということへの感謝を常に忘れない。「無事に消費者のもとへ届けられて、食卓に並ぶことが何よりの供養になる」。感謝と敬意を持って、また1頭、心血を注いだ”わが子”を送り出す。
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