逗子警察署の「一日署長」を務めた全日本プロレス所属プロレスラー 田中 稔さん 逗子市桜山在住 40歳
不屈の闘志で
○…隆々とした筋肉をまとった腕や胸。服の上からでも一見して分かる鍛え抜かれた肉体にプロレスファンの署員が気付いた。「田中稔選手ですよね」。制服姿の署員に声をかけられ「俺、何かやったかな」と一瞬ヒヤリ。8年前から逗子市民。一日署長を請われ「自分にできることがあれば」と快諾した。百戦錬磨の選手だが、一日署長は初めて。「試合では全く緊張しないのに、何度もトイレに行った」。そう笑う表情には少年の様な無邪気さが浮かぶ。取材が始まると「お願いします」と礼儀正しく頭を下げた。
○…小学校4年生の時、テレビで見たタイガーマスクの試合に心奪われた。リングを縦横無尽に飛び回る姿はプロレス遊びに興じてばかりいた少年の目に輝いて映った。「いつか自分もあんな試合がしてみたい」。その思いは青春時代に道筋をつける。高校で器械体操を始めたがそれはいつか選手になるのにアクロバティックな動きが必要と考えたから。己の未来図はかくありき。高校を卒業すると藤原組に入門。想像を絶する練習に一度は挫折するも、20歳のときに再び門を叩きプロの世界に返り咲いた。
○…相手の技を受けきり、幾度やられてもなお立ち上がる不屈の闘志。伝えたいのは、自らも幼少に憧れたプロレスラーの気概だ。「絶対に諦めない気持ち。足を運んでくれた人に『明日も頑張ろう』と思ってもらえるように」。新日本時代も数々のタイトルを保持し、現在は日本最古のベルトと言われるアジアタッグジュニア王座。自身、どれだけ良い試合をしても満点をつけず、上を目指し続けてきたからこその今がある。
○…かつて憧れたレスラーにはなれたかと問われると「まだまだ」と40歳を迎えても向上心は尽きない。来年はプロ生活20周年。節目に全日本プロレスの興行を逗子でやりたいとの思いもある。実現にはハードルも高いが「ぜひ叶えたい」。不屈の闘志を携えた男の言葉は、熱を帯びていた。
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