逗子海岸流鏑馬の射手を務める 鈴木 達朗さん 逗子市逗子在住 39歳
伝統文化の誇りを胸に
○…手綱から手を放し、時速50キロを超える馬上からわずか20数センチの的に矢を放つ―。今年で23回目を迎える逗子海岸流鏑馬。市内在住者では唯一、武田流の射手として大舞台に臨む。出場は今回で5回目。過去には最多的中をとったこともある手練れの一人だ。昨年は思うような結果が出せなかったが「知り合いの方もたくさん見にいらっしゃるので、今年は良い所を見せたい」と意気込む。
○…鎌倉の生まれ。幼少から鶴岡八幡宮で行われる流鏑馬を目にして育った。子ども心に勇壮と疾走する流鏑馬に胸を高鳴らせた記憶からかもしれない。社会人になってから西洋馬術を始め一通りの技術を修めた後、父が先代武田流の師範と親交があったのが縁で門を叩いた。「ただ、これがとんでもなく厳しい世界で」と苦笑い。鎌倉時代から続く伝統ある神事だけに上下関係も厳しく、流鏑馬に臨む心構えを徹底的に叩き込まれた。ただそうした経験あって「伝統的神事をやらせて頂いている、日本人としての誇りに気付かせてもらった」。語る表情に射手の精悍な顔つきがのぞく。
○…勤め先は若宮大路に面する明治時代から続く老舗宿。立地柄外国からの宿泊客も多く、神事がある際には「ぜひ流鏑馬を見に行って」とPRも欠かさない。馬場を走る射手が実はフロントのホテルマンだと知ると誰もが驚くが「いいものが見れた」と満足げに宿を発っていく姿を見るとやりがいもひとしおだ。
○…妻と長男、長女の4人家族。仕事柄、勤務時間が不規則で休みもほとんどない多忙な日々の中、合間をぬって週に1度は馬の世話と稽古に励む。「家族には迷惑をかけているが応援してくれる。ありがたい」。昨年、約1万1千人が訪れた逗子海岸流鏑馬は武田流でも指折りの大舞台で、矢が的中するとひときわ大きな歓声がわく。「お客様の声は射手の励みになる。今年も一緒に射手の腕比べを楽しんで」と呼びかけた。
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