元N響バイオリン奏者で「第3回 逗子第九演奏会」で指揮を務める 前澤 均さん 逗子市逗子在住 75歳
曲に息づく精神大切に
○…市民が主体となって3年ぶりに開かれる逗子第九演奏会。総勢200人近い管弦楽団と合唱団をまとめる指揮者としてタクトを振る。一週間後の本番を控え、練習も佳境。下は小学生から上は80代まで、音楽経験も様々なメンバーが一丸となって歓喜の歌を響かせる。「皆とても張り切っているからね。迫力ではプロにも負けない、熱気のこもった舞台になる」
○…元NHK交響楽団のバイオリニスト。60歳で退団するまで、世界の名だたる指揮者やソリストと演奏をともにしてきた。幾多奏でてきた曲目の中でも、第九への思いは格別。「演奏するたびに深さを感じるし、何度やっても素晴らしい」。だからこそ、指導する際に大切だと説くことがある。曲の中に息づく、作曲者の精神だ。第九はフランス革命後、貴族社会から市民社会への転換期に生まれた背景がある。そこにまつわる人々の不安や悲しみ、希望や喜び――。込められた意味を汲み取るか否かで音楽の形はがらりと変わる。「もちろん技術は必要だけど、一番は心。それはお客さんにも伝わることだから」と諭すように話す。
○…戦時中の空襲で都内から逗子に移り住んだ。音楽との出会いは小学生のとき。生まれつき足が不自由で運動が出来なかったこともあり、母の勧めでバイオリンを手にした。中高を経て東京藝術大学に進学し、卒業と同時にN響に入団。音楽家として成功する秘訣を尋ねられると「僕の場合は運だね。多少の努力はしたかもしれないけどさ」と屈託のない笑みを覗かせる。
○…弦楽四重奏団を主宰し、演奏家としても年に2回九州と東北を行脚するほか、後進の育成にも力を注ぐ。今回第九を演奏する湘南ユースオーケストラは平成元年の立ち上げから長年にわたって携わってきた。喜寿を控えても音楽家としてはまだまだ現役。「それが自分の生きる道だからね。これからも無理せず楽しみながら歩んでいきたい」
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