▽子育てや教育、公共施設の開館時間にイベント開催の見直し。逗子市が緊急財政対策の対象としてあげた約150事業には縮小、休止、廃止の文字がずらりと並んだ。来年度予算編成に不足すると見込まれる7億円は、192億円だった市の今年度当初予算一般会計に比べれば4%にも満たないが、市民生活に与える影響は極めて大きい。
▽市は当初、財政難の要因として、市税の減少や景気低迷による地方消費税交付金などの減収をあげた。だが、最たる要因は歳入と歳出のバランスを欠いた予算編成が常態化していた結果に他ならない。市はこれまで、財源不足を市の貯金にあたる財政調整基金や繰越金で補てんし続けてきた。収入ぎりぎりの出費を続け、「来年も同じくらいの収入があるだろうから」と疑いなく貯金を切り崩す。一般家庭に置き換えれば、いずれ家計が立ち行かなくなるのは自明の理だ。
▽収集のつかなくなった財源不足は、当面の市民生活にしわ寄せがいくだけにとどまらない。市は少子高齢化や人口減への対策として、生産人口、とりわけ子育て世代を市外から呼び込もうと手厚い住民サービスを打ち出してきた。そうしたものが後退すれば、逗子は「選ばれる街」足りえるだろうか。人口流入が得られず、歳入の半分近くを占める市税が減少し続ける。結果、いつまで経ってもサービスを充実できないという負の連鎖にすら陥りかねない。財源不足は、行政運営の停滞に直結する。
▽市は2022年度末までに財政調整基金残高10億円を目標に据える。平井市長が「その年の歳入で賄える歳出規模にしなければならない」と危機感を示す通り、健全化に向けた財政構造の転換は急務だ。年度ごとの事業の見直しや計画の検証も欠かせない。一方で、市の財政対策プログラムの期間は6年。来年12月には平井市長の任期満了を迎える。「来年度の議論が重要だ。財政調整基金が期限まで回復するよう、しっかりと道筋を示したい」。その言葉を実現させ、市民の不安を払しょくさせることができるのか。残り1年で行政の長としての真価が問われる。
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