閑静な住宅街の一角。看板も無ければ、宣伝も一切していない。告知は、1〜2日前に店頭に貼り出される1枚の紙だけ―。それにも関わらず、細い路地に目を疑うほどの行列ができる「お豆腐屋さん」が、鵠沼松が岡にある。
夕方4時半。主婦や自転車にまたがった子どもたちがひとり、ふたりと集まり始める。15分も経つと、あっという間に30人越えの大行列に。5時過ぎ、店の外にも、ほんのりこうばしい香りが漂い始める。そう、彼らのお目当ては揚げたての「おからドーナツ」だ。
「おからを活用したい」
1951年創業。職人歴65年の大久保哲男さんが営む「大久保豆腐店」では昨年6月から、不定期でおからドーナツの販売を始めた。揚げたてでアツアツ、表面はさくさく、中はふわふわのドーナツの評判は口コミで広がり、飛ぶように売れる。日を追うごとに長くなるこの行列の立役者となったのが、義娘・麻子さんとママ友達だった竹内絵美子さんだ。
豆腐作りの過程で出るおからの量は、1日あたり約6kg。その多くが廃棄されていることを知り、鵠沼でフリーのパティシエとして活動する竹内さんは、イヌ用のクッキーなどに活用するように。それでも余るおからを見過ごせず、ドーナツ作りを持ち掛けた。
2人は美味しさを求めて、おからと小麦粉、豆乳、砂糖など、一番美味しくなる割合を試行錯誤。子どもも安心して食べられるよう、保存料やバターも不使用とした。
プレーン味は1個50円、日替わりの抹茶や紅茶、ココア味は60円という安さだ。小銭を握りしめて買いに来る子どもたちや、「素材が生かされたシンプルな味」「お惣菜のようで満足度が高い」という主婦、「食糧が無い時代、母が作ってくれたおやつを思い出す」という70歳を過ぎた人など、幅広い年齢層から愛されている。当初は限定100個だったが、今では閉店7時を前に、400個があっという間に完売する。
御年84歳の哲男さんも「揚げ担当」として参加。その日限定で山芋や昆布、ひじきなど、具だくさんの「特製がんもどき」を小サイズ10円、大サイズ50円で提供している。「常連さんやご近所さんだけでなく、みんなが喜んでくれることが嬉しいね」とはにかむ。
2人も「お義父さんもやりがいがあって、前より元気になったみたい。世の中にはもっと美味しいものがあふれているのに、何でこんなに人気だろうねって」と笑う。「子どものころに訪れていた大久保豆腐店で、こうしてお義父さんと一緒に地域の活性化のお手伝いができるのが嬉しい」と竹内さん。
7・8月のドーナツ販売は無し。9月から不定期で月2回(水曜日)の夕方に開催予定とのこと。
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