9月にオランダで行われるライフセービング世界選手権の日本代表に選出された 植木 将人さん 西浜サーフライフセービングクラブ 37歳
競技で救える命がある
○…6月の全日本種目別選手権のビーチフラッグスで優勝し、ライフセービング世界選手権の日本代表に返り咲いた。4回目の代表選出に、「いやー、嬉しかったですね。結果の電話を待っていた日はドキドキワクワクでした」。全日本選手権はもちろん国際大会のタイトルも手にしてきたが、唯一成し得ていない世界大会の優勝。「ずっと目指してきたこと。大会までの期間を無駄なく過ごし、集中して迎えたい」と心と体の準備を整える。
○…代表の選にもれた2014年。「世代交代」という言葉が頭をよぎった。「コーチをやらないか」という誘いもあった。「走力や瞬発力が落ちているのは、成績にも出ていた。すごく迷いました」。それでも、最後には代表エントリーを提出。自己PR文は、熱を帯びた”決意表明”となった。「日の丸を背負って戦うことに、まだ未練があった」。自分らしさを感じられるのは、競技者として。進化し続けることを誓った。
○…「あなたは愛する人を救えますか?」――高校3年の夏、日本体育大学ライフセービング部と出会い、その言葉に魅了された。「何かあったときに家族は救いたい。ライフセーバーならできると単純に考えた」。学生時代、特別学級の生徒のためのプログラムを担当。「ボードに乗せると障害のある子が楽しそうで。その笑顔に感動した」。養護学校の教諭になったのも、この経験があってこそ。「なぜか繋がっていくんです」
○…自身が活躍することでライフセービングを知ってもらい、多くの人の”きっかけ”になればと願う。「皆が海の知識や心肺蘇生法などを学べば、水辺の事故は限りなくゼロになるはず」。伝えることで、救える命がある――そんな思いも支えに、世界の頂点を見据える。5歳の息子は、父親の競技に興味はない様子。だが強要することはない。「彼の人生だから。でも、背中を見てもらって何かを伝えられれば」