神奈川県優良工場表彰を受賞した東邦精機(株)藤沢工場のトップで同社の副社長を務める 柳沢 慎太郎さん 円行在勤 44歳
人を想う優しさと責任感
○…県内にある製造業を営む中小企業の工場のうち、経営成績や作業環境などが特に優れ、労働災害や公害の発生防止、労働時間の短縮などに取り組んでいる工場をたたえる「神奈川県優良工場表彰」。東邦精機はディーゼルエンジンの最重要部分である燃料噴射用ノズルなどを取り付ける部品「ボデー」を専門で製造加工する国内唯一の企業だ。今回表彰された藤沢工場はその主力。工場のトップ、同社の副社長として、初の受賞について「とても光栄であると同時に、身が引き締まる思い。さらに責任感を持ち、社員みんなでより良い工場にしていきたい」と話す。
○…本社は鎌倉市で、工場は国内に4カ所。自身は藤沢工場で営業や生産、技術の管理、取引先との窓口など、多岐に渡る職務を日々こなす。単調とも思われる工場の仕事は、「排ガス規制やエンジンのモデルチェンジなどにより、取引先からより難易度の高い技術を求められ、刺激的」と笑う。
○…横浜市内で生まれ育ち、学生時代はサッカーやラグビーに熱中。スラッと高い身長と健脚を生かして活躍した。高校卒業後は表具屋の営業マンとして社会人のスタートを切り、結婚を機に東邦精機に入社。「工場で働くことになるとは思ってもみなかった」。畑違いで最初は戸惑うことも多かったが、現在は現場のプロに。加工が職人技からコンピューター制御に移り変わり、自身で計算してプログラムを作って形にしていく工程が「思いのほか性に合っていた」と天職を見つけたようだ。
○…業績は順調だが、電気や水素自動車の広まりに危機感を抱く。「日本のモノづくりの強さは新たな技術の創造。大切な従業員とその家族のためにも、会社の新たな強みを探すことも私の役目」と丁寧な口調で誠実に力強く話す。こうした人を想う優しい気持ちと責任感が、社員の暮らしだけでなく、モノづくり大国日本を支えている。