藤沢市内で農業を営む中越節生さんと横浜市中区で中華料理店を営む(株)隆澤(りゅうたく)が申請した農商工等連携事業計画「菊芋を使用した中華スイーツの開発、製造及び販売」が2月3日、国から認定を受けた。両者は今後5年間、中華スイーツを通じて菊芋の良さを広めていく。
同計画では、中越さんが用田の畑で栽培する菊芋を使い、中華料理のレシピ開発ノウハウを持つ(株)隆澤が菊芋中華スイーツを製造する。横浜中華街にある同社の料理店「新錦江(しんきんこう)」やデパートの催事などで販売することで、風味に癖がなく、健康にも良いとされる菊芋を広める狙いがある。
すでに菊芋をすりおろして生地に練りこんだ蒸しパンのようなスイーツ「菊芋マーライコウ」をはじめ、菊芋ごま団子やプリン、杏仁豆腐など4種を開発。5月から季節に応じた商品を販売する予定にしている。
菊芋は無味無臭、ゴボウのような食感で食物繊維が豊富な健康野菜だが、あまり一般に知られていない。市場で偶然菊芋を見かけた(株)隆澤の柏木力専務取締役は、そんな菊芋の将来性に着目。スイーツに取り入れることで消費者も手に取りやすくなればと考え、県内の菊芋生産者を探したところ、取引のあった湘南信用金庫や県中小企業団体中央会を介して中越さんと知り合い、意気投合。両者は約8カ月をかけて、認定されると補助金や専門家のアドバイス等の支援が受けられる「農商工等連携事業計画」申請へ向けた準備を進めてきた。
知名度上げ、生産増へ
農林業者と商工業者それぞれの強みを発揮した事業活動で経済活性化につなげようと、農林水産省と経済産業省が2008年から毎年行っている「農商工等連携事業計画」には、これまで全国164件が認定されている。そのうち中越さんと(株)隆澤の計画は神奈川県内で20件目となるが、「菊芋」という珍しい着眼点が高く評価されたという。
就農者増にも期待
菊芋は繁殖力が強く、栽培しやすい作物ながら知名度の低さから、生産農家は全国的に見ても少なく、藤沢市内にも数戸しかいない。
中越さんは脱サラ後、千葉で農業を始め、9年前から自然農法による菊芋の栽培などに取り組んできた。5年ほど前に藤沢に移り住んでからも継続し、自身が運営する善行の直売所「八○八」で販売するほか、新規就農希望者にその栽培ノウハウを伝えてきた。
「菊芋の加工品を作りたかったが一人では難しかった」と中越さんは話し、(株)隆澤との連携を喜ぶ。計画認定を受けて「菊芋の知名度が上がり、消費量が増えれば菊芋を生産したいという就農者が増える。菊芋が藤沢の名産になれば、藤沢で農業をしたいという人も増え、休耕地を減らすこともできる」と期待は大きい。
菊芋の収穫時期は通常12月から3月だが、今後は年間を通してスイーツを製造するために、農地管理や新たな保管方法を確立し、通年出荷に挑戦する。現在、年間収穫量は1・5tほどだが、農地を広げ、倍の収穫量を目指していくという。
「菊芋の生産を通じて、湘南野菜ではなく、『藤沢野菜』のブランド化を図り、市内の農業経営が安定すれば。五輪に向けても売り込みたい」と中越さん。(株)隆澤の柏木専務も「藤沢産野菜と横浜中華街のコラボも面白い。いずれはスイーツだけでなく、中華料理全般に取り入れたい」と話した。
藤沢版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|