3月13日に第42回発明大賞の「発明大賞本賞」を受賞した(株)バイオクロマトの代表取締役を務める 木下 一真さん 羽鳥在住 42歳
諦めない気持ちで新発明
○…優れた発明で産業の発展に寄与した中小企業、研究者を表彰する「第42回(2016年度)発明大賞」で、全国の応募総数67件の中から、最高賞の「発明大賞本賞」を受賞した。薬品が激しく沸騰して後処理に手間がかかる「突沸」を防止できるよう、世界初の濃縮方法を活用した試料濃縮装置「コンビニ・エバポシリーズ」の開発、普及に成功したことが高く評価された。医薬品や塗料など幅広い製品開発分野の研究者のリスクを大きく軽減できる装置で、「受賞できて大変嬉しい。開発中、絶対に諦めないという気持ちが根底にあった」と語る。
○…きっかけは、製薬会社に勤める知人からの助言だった。突沸防止方法などのアイデアをもらい、自身が経営する(株)バイオクロマト(本町)で10年ほど前から同装置の開発に着手。製品化したが数年間は販売台数ゼロが続き、試行錯誤の日々を送った。何度も試作を繰り返し、11年に特許を取得。学会発表や販売営業に尽力した結果、「現在は国内外800台を販売するまでに拡大した。今年中に累計900台を突破したい」と普及に意欲を燃やす。
○…生まれも育ちも藤沢市。幼いころから「『右に倣え』という考えが嫌いで、人と違う変わったことをしたいと思っていた」という。父親が設立した同社を引き継いだ後、その思いは「誰も作ったことのないものを作りたい」という目標に変わった。「新製品開発を始めるとき、周囲の賛同を得られない場合もある。でも何かを成し遂げるには反対を押し切り、既成概念にとらわれないことが大切」
○…3児の父親で、休日は我が子を連れて江の島沖で船釣りを楽しんでいる。また小、中、高とサッカーを続け、現在も仲間とプレーするという。今回の受賞を振り返り「藤沢の企業の技術力の高さが全国に知れ渡った。将来は、多くの子どもにものづくりの魅力を知ってもらえるよう努力したい」と言葉に力を込めた。