飲食店ビルとしては市内唯一、消防管理が厳しい「特例認定」を受けるビルのオーナー 矢島 紀男さん 葉山町在住 68歳
安全確保に手は抜かない
○…「同じやるなら、しっかりやろう」。3年前から管理会社とともにビルの消防管理に取り組んできた。その実績から、昨年11月に飲食店ビルでは市内第1号の「特例認定」となった。
○…高校卒業後、ホテルでコックを経験し、その後は逗子で兄が経営していたスーパーマーケットへ。大船駅前でテナントビル経営を始めたのは1994年のこと。「子どもの頃からコックの姿をみてカッコイイと思っていた。若者に腹いっぱい食べてもらいたい」と、そのビルでステーキ屋を始めた。それが、現在ステーキチェーン店と知られる「ペッパーランチ」の第1号店だった。
○…同店との出会いは94年、ホテル・レストランショーでのこと。電磁調理器を使ったビジネスプランを出展していた創業者と意気投合し、1号店を任された。「とっても繁盛しましたよ。すごかった」。その後、創業者との方向性の違いから昨年3月に店を閉じ、現在は同所で娘を店長にとんかつ専門店を展開する。
○…ビール瓶のケースや掃除道具を階段に置くなど、避難経路が確保されていない飲食ビルが多いのが現状だという。「まずはお客様の安全を確保しなければならない」との思いから、手間のかかる消防管理に取り組んだ。テナントに頭を下げ理解を求めた。その結果、「100%受け入れてくれた。テナント様のおかげ」と話す。
○…生まれも育ちも葉山。以前はヨットでよく海に出たという。「今もたまには逗子マリーナに行きますよ」と微笑んだ。娘がバレエを習っていた影響から、「クラシック音楽が好きになりましたね」。
○…日々、月1回の検査など、「特例認定」は消防管理に手間がかかる。しかし「このレベルは決して落としてはいけない。当たり前のことをしているだけ」と語気を強めた。「今回の震災で意識を新たにした」と、平時からの備えの重要性を訴えた。