ごみ新焼却炉 検討へ 来年度には人件費の一律カットも
本紙では、松尾崇鎌倉市長に恒例の新春インタビューを行った。松尾市長は急務となっている防災対策をはじめ、ごみ焼却施設や行財政改革などについて、見解を述べた。(聞き手/本紙・鎌倉編集室 清田義知)
防災対策については、昨年12月に県が発表した津波想定に対応するため、3月までに避難場所や海抜などの情報を盛り込んだ暫定版ハザードマップを作成し広報する方針を示した。正式な同マップは来年度になる。
懸案となっているごみ焼却施設については、従来どおり2015年度までに今泉クリーンセンターの焼却を停止し、当面、名越に一本化する。その一方で、市内でのごみ焼却体制を整えるため、「新焼却炉」の建設検討を明言した。
市長が掲げる焼却量減量化目標の約6割を占める事業系ごみについては、手数料の改定を任期中に行う予定だという。近隣市と比較して鎌倉市の手数料は低く、適正化することが目的。
行財政改革については、高水準の人件費抑制に引き続き意欲を見せる。2010年度においては全国3位である鎌倉市職員の給与。市長は、来年度に人件費の大幅な一律カットを表明した。また、多選については例年通り「権力は腐敗する」として、4期、5期以上には否定的な考えを示した。
結果を出す施策に注力
新焼却炉の本格検討や人件費一律カットも
津波対策を最優先
――東日本大震災を受けて。鎌倉市にとっても地震や津波対策は急務。震災後の取り組みを教えてください。また、今後の課題は。
「やはり一番は津波対策。市広報紙誌に避難所や海抜などを表示した海抜マップを掲載した。また、市内各地域の津波避難訓練を行政がサポートしてきた。防災行政用無線の難聴地区の課題もあって、対応としては、子局の増設をはじめ、無線を聞くことができる防災ラジオの導入に向けて市内全自治会・町内会に調査をお願いしている」
――県が昨年12月に発表した津波による浸水区域想定を受けて、市は正式なハザードマップを来年度作成するのですか。
「正式なものは来年度になるが、まずは暫定版をなるべく早く、3月中には広報できればと考えている。内容の詳細はこれからだが、避難場所や海抜などの基本的な情報は掲載したいと考えている」
昨年11月に放射線量一斉に調査
――放射線量について。市内のモニタリング調査は、どこでどのくらいの頻度で実施していますか。また、いわゆる「ホットスポット」は市内にありますか。
「基本的には子ども関連施設を対象に実施している。小学校で空間線量の測定を行っており、数値に大きな変動はみられていない。
昨年11月には保育園、小学校、中学校、また民間の幼稚園などの子ども関連施設で、線量が高いであろうと考えられる雨どいの下や側溝などを対象に、一斉に調査を行った。公共の公園でも計測しており、200ヵ所以上あるため毎日5ヵ所程度ずつ実施している状況だ。
調査の結果、線量が高いところについては、土などをすでに『除去』している。また、文科省が定める毎時1マイクロシーベルトを大幅に超えるようなところはない。もちろん測定場所や方法などは慎重に検討しているが、ただちに緊急的な対応が必要とは考えていない」
――下水汚泥について、近隣市等では放射線量が高いことから埋め立て等の最終処理ができないことが問題となっています。鎌倉市における汚泥および焼却灰の対応をご説明下さい。
「最終的な対応がまだ決まらないため下水汚泥の焼却灰は現在、山崎の処理場屋内に保管している。
1日あたり、1・2トンの焼却灰が出ており、12月1日現在で292トンが保管されている。屋内のスペースは、今年度いっぱいはまだ大丈夫だと報告を受けているが、それまでに何らかの対応策が取れればと考えている。屋内の保管場所がいっぱいになれば、屋外でコンテナ等を使用した保管方法も検討することになるだろう」
――焼却灰の線量は。
「5月18日においては1kgあたり2866ベクレル、11月11日では530ベクレルで、線量は減少傾向にある」
新焼却炉で市内完結を目指す
――今泉クリーンセンターについて、2015年度焼却停止の方針に変更はありませんか。
「はい。その計画で地域の方々にはお願いをしている」
――焼却停止するのであれば、その理由を教えてください。
「過去に、国の方針で焼却施設のダイオキシン対策が必要となったことがある。名越と今泉の2ヵ所ともその対策工事をすると、費用面でかなりの負担になることから、当時市は、今泉を焼却停止して焼却施設を名越1つにしようとした。
それを実現するために竹内市長時代に『ごみ半減化』を掲げたが、実現する見込みが立たず結果的に今泉を焼却停止することができなかった。そのため市は、地元住民に対して『改修後長くとも10年、平成25(2013)年頃までに焼却を停止する』と約束している。
地元の方は、遅くとも2014年度末の焼却停止を求めているが、市としてはもう一年の猶予をいただきたいと考えており、しっかりと話し合いを行っていきたい。
住民に対して、一度焼却停止を約束し、それを守れなかった。今回は2度目の約束となるわけで、稼動延期を求めて、また反故にするわけにはいかない」
――2つのごみ焼却施設が1つになるので、代替施設が必要との考えがあります。その考えについて市長の見解は。
「名越も今泉も施設の老朽化が激しく、また名越については、炉を延命化するものの、もともと敷地が狭くて無理をしている状態といえる。
ごみ焼却について市の方針を過去10年ほど振り返ると、市内では、用地の問題もあり、市外で焼却できる三浦半島地域のごみ処理広域化構想計画に前向きに取り組んできた。
逗子市とは協議を進めているが、なかなか具体化には至らない状況だ。
ごみ焼却の考え方について、本市は、原点に戻るべきだ。つまり、逗子市との広域連携については継続的に取り組むが、市でしっかりとごみを焼却出来るようにしておかなければならないということだ。『新焼却炉』の建設を本格的に検討する必要があると考えている」
――当面のところ代替施設を建設せず、市民および事業者にごみ減量化を求めることについて、どのように理解を得ようと考えていますか。
「ごみをそもそも出さない、発生抑制を進めるのが私の考えだ。大量生産・大量消費で大量のリサイクルを行うのではなくて、『リデュース』を柱に、ごみの削減をしっかり行うべきだ。それが、環境との共生を実現していく方向だと考えている。
家庭から出る生ごみは、昔は庭に埋めて肥料にすることもあった。今も生ごみ処理機などで処理することは、良いことだろう。
事業系ごみに関しては、これまで分別の徹底など、十分な対応ができていなかった。今は各事業者にしっかりとした対応をお願いしており、理解いただけるものと考えている。
事業系ごみの手数料改定も視野に入れている。現在鎌倉市の手数料は1kgあたり13円で、藤沢市や茅ケ崎市は20円だ。減量審(市廃棄物減量化及び資源化推進審議会)で、適正な手数料額を検討するようお願いしている。任期中には改定する方針だ」
――市長が掲げている焼却量減量化計画(※)の進ちょく状況をご説明下さい。
「今年度の達成目標として、生ごみ処理機の普及台数が十分とは言えない。今後も市民に理解を得られるように取り組みたい」
――減量化計画の肝は事業系ごみですか。
「そうだ。そのためにも現在しっかりと準備を進めている」
※焼却量減量化計画…焼却ごみ1万4300トンを2015年度までに減量する。うち、約6割を事業系が占める。人口推計、1人当たり発生量の推計から2015年度の発生量は4万178トンと見込む。
――逗子市とのごみ処理広域化の協議は具体的に進んでいますか。
「現在は、両市の焼却炉の延命化工事を控えて、具体的な連携のあり方について意見交換を行っているところだ」
――市長は、市内ですべてのごみ処理を行うべきだというスタンスですか。
「そうではない。植木剪定材などすでに市外で処理している。私がやらなければならないと思っているのは『焼却』についてだ。焼却施設はつくるのが難しいものだが、逃げてはいけないと考えている」
来年度、人件費大幅な一律削減
――2010年度は全国3位と未だ高水準にある職員給与。2011年1年間の取り組みと、今後の職員数削減を含めた人件費抑制策をご説明下さい。
「一番の問題は『手当』。住居手当については、異常に高額であったので、2年間にわたり2段階で削減し1億円以上の効果が出た。時間外手当については、月60時間以上の残業は、事前申告制として市長決裁にした。これを徹底することで抑制されてきている。勤勉手当もその算定基準の見直しにより、2千万円ほど減らすことになった。
私はマニフェストで人件費1割、職員数2割、時間外手当3割の削減を掲げた。市民の理解を得るためにも、来年度に人件費の大幅な一律削減を行う必要があると思っている」
世界遺産登録「生活への影響少ない」
――市民生活への影響が懸念されています。住宅改修や建設、開発行為は現状よりも基準が厳しくなるのでしょうか。
「遺産候補の周りに位置するバッファゾーン(緩衝地帯)においては、現在すでに古都保存法や景観法、風致地区条例により一定の制限があり、これ以上基準が厳しくなることはない。世界遺産登録が市民生活に大きな影響を及ぼすものではないと考えている」
4、5期には否定的
――多選についての市長のお考えは。
「権力は腐敗する。4期、5期またはそれ以上の多選は好ましくないと考えている」
――今年の抱負と市民へのメッセージをお願いします。
「市長就任2年間を振り返ると、市民への情報発信が不十分だったと感じている。今後は、情報の伝え方を充実させていきたい。
より一層市民の皆様の声を聴き、また声なき声にもしっかりと心を寄せて、山積する課題の1つ1つに対して、確実に結果を出していきたい」
――ありがとうございました。
|
|
|
|
|
|