4月1日付で鎌倉文学館の4代目館長に就任した 富岡 幸一郎さん 雪ノ下在住 54歳
伝統文学と新世代をつなぐ
○…鎌倉文学館の館長就任が決まり、「本当にびっくりしました」と話す。戦後文学を独自の視点で考察するなど、文芸評論家として活躍するとともに、関東学院大学の文学部教授として教鞭をとる。
○…これまでは、開館20周年記念の「文学都市かまくら100人」展や「芥川龍之介の鎌倉物語」展など、いくつかの文学館の企画展に携わってきた。芥川については、企画立案の中心として手腕を発揮。「いかに若い人にも足を運んでもらうか」に腐心したという。それらの実績もあり昨年11月ごろ、山内静夫前館長から声をかけられた。日本の近代文芸史に残る「鎌倉文士」たち、その足跡を後世に伝える文学館の館長に推薦され、「名誉なことです」と襟を正した。
○…文学に出会ったのは中学1年生のころ。「野球選手になりたかった」という少年が、三島由紀夫を前に、表現の豊かさなど、言葉の魅力に惚れ込んだ。また、高校では評論家の大家、小林秀雄の大ファンに。「鎌倉まで会いに行ったくらい」と笑った。そのころから、「評論」が自分の性に合うと思ったようだ。中央大学文学部のフランス文学科在学中に、21歳で講談社の「第22回群像新人文学賞評論部門優秀作」を受賞する。ちなみに小説部門の当選者は村上春樹。「彼がやっていたジャズバーに何度か遊びに行きましたね。当時は、こんなに有名になるとは思わなかった」と振り返る。1991年にはドイツ留学も。その頃に、都内から鎌倉に居を移した。
○…妻と娘2人の4人家族で、これまで長女に更新を任せていたブログは、「嫁に行っちゃったからできないなぁ」と苦笑い。息抜きは散歩。お酒も好きで、「色々な人と会いますね」と、よく小町の路地でグラスを傾けるという。
○…鎌倉の魅力は、伝統と新しいモノがともに共存していることだという。その魅力ある地で、新たな文学館運営の舵を取る。